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【第38話】沖縄本島一周編その④ 国頭村→辺戸岬

こんにちは。
今年も残すところわずかとなりました。おそらくこれが本年最後の投稿となるでしょう。もう5年前になりますが、2018年に行なった沖縄一周自転車旅を振り返り、ストーリー仕立てにまとめています。前回のお話ではヤンバルの玄関口、国頭村までやって参りました。今回はついに沖縄本当最北端、辺戸岬を目指します。どんな出会いが待っているのでしょうか…。

▼前回のお話▼

突端の秘境、大石林山へ。

道の駅 ゆいゆい国頭から北へ約18㎞走り、美しい港風景を望む茅打バンタへと到着。続いて、ここからわずか1㎞先にある大石林山へやって来た。大石林山は、灰白色をした大小さまざまな奇岩石が無数に顔を見せるカルスト地形。亜熱帯自然林のトレッキングコースが整備された観光施設で、ヤンバル随一の名所だ。とんでもない広さの駐車場がそれを物語っている。チケット売り場で1200円を支払い、散策路まで片道5分のバスで向かう。いくつかコースが設定されているが、せっかくなので全てを網羅できるよう外周を歩き、1時間のトレッキングを楽しんだ。個性豊かな石灰岩や巨大ガジュマルなど見どころはたくさんあったが、中でも標高200mにある「美ら海展望台」からの眺めは格別だった。自分がイメージする白砂の沖縄はそこにはなく、密林と牧草地が広がる台地と、海と陸を決定的に隔てる断崖絶壁が広がっていた。ここは南の楽園ではなく、“離島”であり、最果ての地であることを実感した。珍しくウォーキングを満喫し、駐車場へ戻って来た頃にはもう15時30分を過ぎていた。

北端エリアでは貴重な大型施設。ここら一帯のすべての富がここに集まっているのだろうか
キノコ岩。ほかにも、悟空岩、烏帽子岩、骨盤岩などさまざま
美ら海展望台からは奄美群島の与論島や沖永良部島まで一望できる
日本最大級だという御願ガジュマル。キジムナーの目撃談もあるそう。ぜひ会ってみたい

沖縄本島最北端・辺戸岬

大石林山から約2㎞、山を下った先にあったのは沖縄本島最北端・辺戸岬だ。ついにここまでやってきた。岬の碑をバックに自転車をカメラに収め、遊歩道を巡ってみる。荒波が止めどなく打ち寄せる、険しい崖が続いていた。さて、ここまで来たがひとつ忘れていることがある。今日の宿だ。沖縄本島最北端まで来ると、宿泊施設は2、3軒しかない。もう16時前だ、空いている訳がなかろう。寝袋は持って来ていないが、最悪、野宿する覚悟だった(本当はNGだが)。ダメもとで一軒、電話してみる。ちょうど当日キャンセルが出たので一名分の部屋があるそうだ。ありがたく泊まらせてもらうことにした。辺戸岬から宿まではわずか9㎞だが、山の中を走るハードな道のりだった。地味にキツい200mアップダウンを越え、湾に面した小さな集落・奥港へ到着した。何があるという訳ではないが、久々の人の気配に少し安心した。もう17時、やさしい陽射しが一日の終わりを告げていた。集落を抜け再び森へ向かい、数百m走ったところで宿へ到着した。「空の間 INDIGO」。ここで不思議な体験をするのだった。

沖縄島最北端の地、辺戸岬
岬の背後に堂々とそびえる辺戸岳。標高248.3m
奥港の共同売店には住民の姿が。集落随一のコミュニティ形成の場だ
国道58号の碑。ここから海上国道に入り、鹿児島県奄美大島へと至るそう

空の間 INDIGO

さて、今回泊まるお宿はどんな場所だろうか。敷地に入ってまず驚く。森が広がっている。その中に小屋がいくつか点々としている。受付はどこだ? うろちょろしていると偶然、女性の姿を発見。話しかけるとその人が宿の方で、すぐにご主人を呼んできてくれた。どうやら敷地内にある客室のロッジ、食事処、シャワールームなどは基本的に主人がDIYで手がけているらしい。最近よくあるオシャレキャンプ場やコテージのそれとは異なり、主人の趣向が色濃く浮き出た、世界観満載の建物たちだ。さっそく、客室へ案内される。四方に窓がある、シンプルな小屋だ。6畳ほどのワンルームに、セミダブルのベッドと小さなテーブルが設置されている。これは面白い予感がするぞ。敷地内には他にも主人お手製の作品がいくつか用意されているらしく、夕食の時間まで散歩してみることにした。森の中にアスレチックやアトリエがある。ひとりで佇んでいると、なんだか不思議な気持ちになった。

ロッジのエントランスにはベンチが置かれている
敷地内を歩き森を抜けると、見晴らしの良い海岸へと辿り着いた

食事の場所はカウンター式の、これまた小さな東屋のようなところだった。もう一組の宿泊客も夕食に足を運んでいた。小さな子供を連れた若そうな女性だ。何故わざわざこんな僻地を選んだのだろうと少し思ったりしたが、次々と出てくる見たことのない創作料理と、カウンター越しの主人との会話に夢中になるうちに、すでに気にならなくなっていた。この宿は女性の利用客が多いらしく、自分のような男性が来るのは久々だったそうで、主人はとても喜んでくれた。ディナーは食事のみのコースだったが、ご厚意で少々お酒を振舞ってくれた。あっという間に時間は流れ、周囲の景色はすっかり暗くなっていた。翌日は早朝の出発のため、直接お会いできるのはこれで最後だと別れを告げた。自分の部屋へ戻る途中、夜の森を歩きながら空をふと見上げる。こぼれそうなほどの数え切れない星が輝いていた。見たこともない星空だった。じっくり観察したかったが、お酒のおかげで眠いのと、結構な肌寒さだったので部屋へ急いだ。カメラでは捉え切れない美しさを眼の裏に焼き付けた。夜になっても森の中に流れる優しいオルゴールの音色に耳を傾けながら、ふかふかのベッドで穏やかな眠りについた。

雑穀米を押し固めた、秋田のきりたんぽのような料理

沖縄7DAYsツーリングは3日目終了。あと4日を残しながら、最北端へ到達した。あとはのんびりと、景色と観光を楽しもう。
つづく…。

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