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【第35話】沖縄本島一周編その① 那覇→読谷村

こんにちは。
今回の舞台は、ついにやって来ました沖縄です
沖縄というと皆さん何を思い浮かべるでしょうか。青いビーチ、首里城、カラフルな魚、沖縄料理………。周囲476㎞ある沖縄本島を一週間かけて、自転車で一周してみると新しい発見があったのでした。そこには沖縄という島にまつわる、ひとつのストーリーがありました。物語の旅へ、さあ出発だ。

沖縄マップ、描き下ろしました

羽田空港で寝る

そもそも社会人になって1週間も休みが取れたのは、言うまでもない、退職の有休消化だ。もし3月に一週間の休みを貰えたら、南の島に行きたいという人は少なくないだろう。私も例外ではなく、かねてより望んでいた沖縄への旅を迷うことなく選んだ。3月21日〜27日の7日間のツーリング。例によって前日に空港泊。20日、夕食後に自宅を出発し、羽田空港に着いたのは23時頃。寝られるベンチが多いと噂の第3ターミナルへ。歯磨きまで自宅で済ませてきたので、空港では寝るだけだ。周りから孤立したポツンとベンチを見つると、輪行袋に入った自転車を肩から下ろし、ベンチの上に横たわり、カッパに包まって眠りに着いた。だが空港に休みはない。深夜2時になっても、明け方の4時になっても、従業員やカートがひっきりなしに往来する。眠りの質は悪く、実際には目をつむって5時間過ごしている状態だった。そして朝を迎える。電車で第1ターミナルへ。羽田-那覇間のフライトは約3時間。離陸とともに意識が消え、着陸の「ドスン」の衝撃で現世に帰って来た。あっという間に沖縄に到着だ。空港で遅めの朝食を済ませ、輪行解除しサドルに跨った。早速スタートだ。まず目指すは約3.5㎞先、那覇市街だ。

空港のベンチで始発便を待つ猛者たちは他にも沢山いた
那覇空港で降りて早速バーガーを
那覇市内の幹線道路。想像以上に中層ビルが立ち並ぶ都会だった
街中に突如現れる三連アーチ型の石門。そこをくぐると見事なガジュマルの木が…

那覇の街で世界遺産を歩く

那覇市街地から東へ右折し、内陸にある首里城を目指した。ツーリング初日は体を慣らすために距離はあまり稼がず、観光もしっかり抑えるのが自分のスタイルだ。首里城の手前にあったのが金城町石畳道。長さ約300mの石畳敷の坂道が続き、住居や庭園が並ぶ。本土では決して見られない、沖縄らしい家並みを見渡しながら、はるばる遠くへ来たことを実感する。世界遺産・首里城や玉陵は、1時間ほどかけて見学。再び海側へ戻り、漁港で昼食をとる。ここからが本当のサイクリングだ。街を離れ、海を左手に眺めつつ、ペダルを漕ぎ進める。近年に整備された道路なのだろう、米軍基地や小さな漁港をパスできるよう、海へ迫り出すようにいくつもの橋梁で結ばれている。風が強い。吹き付ける風が、南の海の湿った空気を運んでくる。海沿いの道路を離れ、一本内陸を走る国道58号へと合流した。この国道58号は、鹿児島から海上航路を南下し、種子島、奄美大島を経由して沖縄本島西岸を辿る、日本一の距離を持つ海上国道だ。特に沖縄県にとっては大動脈となる特別な道路で、“ゴーパチ”の名でも親しまれているそう。確かに交通量は多く、「千葉の道路です」と言われたら、そう見えてしまうかもしれない。

金城町石畳道の上から街を眺めると、台風に強い伝統的なコンクリート造りの家々が建ち並んでいる
2019年の火災で焼失する前の首里城正殿
沖縄といえばグルクン。唐揚げを頼んだら、意外と骨が多くて食べるのに時間がかかった
那覇市の北に面した浦添市へ。カーミージー橋からの眺めは清々しい
浦添市から宜野湾市へ。空は曇っているが、海が青く透き通っているのがよくわかる

沖縄にある道の駅とは

宜野湾の市街を抜けやって来たのが、道の駅かでな。あの嘉手納基地で知られる場所だ。道の駅の屋上展望台から、基地を一望できる。堅牢なコンクリート塀の向こうには、見たこともない形状をした戦闘機が轟音とともに空を行き交っている。ここからわずか5㎞、続いて道の駅 喜名番所へ。道の駅と言いながら小さな木造平家がポツンと建つのみで、飲食どころか物販すらもない、綺麗な休憩所といったところだ。さて、気がつくともう17時前だ。さすがは沖縄。3月といえまだまだ明るい。道の駅のすぐ近くのゲストハウスに予約がとれた。当日の電話にもかかわらず、快く旅人を受け入れてくれたのだ。今回お世話になったのは、ゲストハウス琉球庵。なんとこの日は、他に宿泊客のいない貸切状態で、その代わりに宿主とマンツーマンの形で交流を深めた。近くに食事処がないので、スーパーまで車を出してくれたり、三線で「きらきら星」を教えてくれたりと、思い出深い夜を過ごせた。

すぐ隣の敷地は、日本であって日本ではない。それが沖縄なんだと、目で見て、音で聞いて実感する
住宅街の小道に面したごく普通の民家で、看板がなければ素通りしてしまいそうだ
フレンドリーな宿主と一緒に買い出しをし、沖縄感満載の惣菜を夕食に晩餐を楽しんだ
屋内は広々とした明るいリビングに、立派なソファが配された快適な空間だった

寝室は一番安いドミトリータイプ。明かりを消した部屋で一人、ベッドの下段で横になる。布団で寝るのは二日ぶりだ。今日の行程は那覇空港から読谷村までのわずか40㎞。初日にはちょうどいい距離だ。明日はどれくらい走れるだろうか。期待を膨らませながら、穏やかな気分で眠りに落ちていった。

第36話へと続く…。


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