空に溶ける
今日も陽が沈む
地上の星が瞬き始め
空が藍に染まり
水平線を 太陽の残り香が
朱(しゅ)に染める
呼吸を忘れて眺める
刻一刻と変わりゆく
色と世界を
只々(ただただ)美しい
頬を熱いものが流れてゆく
やがて広がる漆黒に
空と海の境界が分からなくなる
波の音と 漆黒の海
飲み込まれそうな感覚を覚えて
身を震わせる
目を上げれば
そこには億万の輝き
何億光年の時を超えて届く瞬き
それを想うとき
「嗚呼、なんと矮小なのだ。」と
自分の存在のちっぼけさを思い知るのだ
波の音と漆黒が わたしを包む
心地よく昏(くら)い悦楽(えつらく)
空に溶けてゆく
あの輝きに届かぬわたしは
昏い夜空に溶けて
あなたを輝かせたい
漆黒の空に口づけを
そうして空に溶けてゆく
嗚呼そうだ
溶けてゆくのだ
おしまい
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撮影場所
石川県輪島市 白米千枚田
人口の灯りが少なくて星がよく見えます。
カメラと三脚、生温い酎ハイの缶とスルメ。
焚き火台でパチパチと踊る火の粉。
そして漆黒の夜空に踊る星々。
うん、贅沢。
何度でも行きたい。
某声劇アプリを使い始めたばかりの頃(2年前)にアップしたお題をブラッシュアップしました。
「漆黒」という表現が多用されていて、でも他の言葉に置き換えられない語彙力の無さに絶句しながらも個人的には気に入っている詩です。
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