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切り取られた時間
小さい頃から、人が何をしているのか気にするような子供だった。
人の目が気になるとか、人と同じじゃなきゃと考えていたわけじゃない。
むしろ、自分が浮いていても気づかないような気質だったくせに、ふと、みんなが何をしているのかが気になって不安になった。
小学校から帰ったら、何するの?
ご飯の時間まで何してるの?
子供の頃は素直に口に出して、その度にみんなから「普通にしてるよ」と言われて首を捻っていた。
普通って、何かよくわからなくて。
大人になった今も、よく考える。
みんな、何をしてるの?
企業勤めじゃないので、ふらりと平日の午後に駅に行くと、そこには私と同じように何をしているのかよくわからない人たちがぱらぱらといた。
空は晴れていてほどよく暑く、風が心地よい。
田舎というほどではないけれど、電車は10分に1本しか来なくて、みんな、ぼんやりと駅のベンチで電車を待っていた。
私も、その中に混じってじんわりとした暑さの中、電車を待つ。
こういう時にやっぱり考える。
──みんな、何してるの?
会社勤めをしていた時は忘れてしまっていた疑問を、どこか切り取られた時間を得ると思い出してしまう。
部屋の中で過ごしていると忘れがちだけれど、世界は私が何をしようと動いているし、みんなだって私とは関係のない世界で生きている。
みんなからすれば、私も立派に何をしているのかわからない人なのだろう。
このまま、目的を決めずに電車に乗ったらどうなるのだろうと考えたけれど、所詮は地元の電車。
最終地点だって行ったことがある。
随分と遠くまで体を運んでくれる列車だけれど、端っこは案外降りたことがある駅だったりするものだ。
それなら、降りたことのない駅で降りたらどうなるだろう。
降りてみようか。
自慢ではないが、私は大層な方向音痴で初めて行く場所には必ず30分から1時間前に着く予定で動く。
つまりはそれくらい迷う時間を確保しておかないと、予定通りの時間に着かないのだ。
そんな自分が、見知らぬ駅で降りて目的もなしに歩いたらどうなるのか。
決まっている。迷う。
迷子はあまりいい気分はしない。
不安だし、疲れるし、焦る。
でも、たまに……そのまま歩いて行ってしまったらどうなるのだろうと思うことがあるのも本当だ。
駅のアナウンスが聞こえ、隣に座っていたおじさんが腰を浮かせた。
それにつられてさらに隣に座っていたおばさんが立つ。
ふわっと強い風を乗せて、電車がホームに入り、そして出て行った。
急行列車はこの駅には止まらない。
「……急行か」
誰かに言い訳するように呟いて、おじさんがまた座る。
おばさんも何気ない顔で座り直して、またみんな元通りになった。
その様子を一通り見守っていた私は、目的通り次の電車が来たら乗り、隣の駅で降りようと決める。
「つかぬことを伺いますが、今から何をされるご予定ですか?」
隣に座るおじさんに話しかける自分を想像して、ちょっと笑った。