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【デザイン、ブランディングの話】コアスペックを見つける

スペックとベネフィットについて説明しました。もうちょっとスペックについて説明したいと思います。

前々回はこちら。

前回こちら。


スペックはたくさんある

スペックと言っても、ひとつの商品にもたくさんのスペックがあります。パソコンであれば、CPU能力、SSDの性能、グラフィックボード品質など、さまざまなスペックで商品は構成されています。たくさんある中で、どのスペックを紐解きベネフィットを導けばいいのかは、なかなかわかりません。

そもそも、商品・サービスを提供している、製造している人たちは、商品のことを一番知っているはずですが、思いの外、知っていません。どういうことかというと、知りすぎているが故に、他の人からするととても価値あるスペックなのに、当たり前にしか見えていないということです。

シュリッツの逸話

こういった例としてよく挙げられるのが、アメリカのビール「シュリッツ」です。かつて、シュリッツは売り上げ不振に陥っており、他のビールに負けていました。打開するために経営コンサルからアドバイスをもらうことにしたのですが、まずは会社を知ってもらうためコンサルに工場の中を案内したそうです。そのコンサルが見た工場の光景はこんなものでした。

工場には深い井戸がいくつもあり、ミネラル豊富な美しい水を汲み上げていました。木材パルプでできたすばらしい濾過フィルターや、毎日何度も洗浄消毒するという美しい製造機械、6ヶ月もビールを熟成する大樽など、彼にとって全てが驚きだったと言います。「なぜ、こういった手間隙やこだわりを消費者に伝えないんだ」と問うたそうです。返事は「他のビール工場でも同じことをしていて、なにも珍しいことではない」と。

しかし、コンサルの案に従い、そのことを宣伝広告すると瞬く間にシュリッツは売り上げを伸ばし、業界トップになったというのです。

コアスペックを見つける

シュリッツの場合は、業界の者にとっては当たり前だけれども生活者にとっては非常に価値あるように見えるスペックを見つけ出し、いち早く伝えたことによって他に差をつけることができました。こういった価値あるベネフィットを裏付けるための起点になるスペック、要は最も重要なスペックを私はコアスペックと呼んでいます。言い方を変えればUSP(ユニークセールスプロポジション)なんかとも言えるかもしれません。

このコアスペックを見つけるのは簡単ではありません。見つけるためにはいくつかのポイントを押さえた上で、何度もスペックの分解を行い、検証していくしかありません。ポイントは

・当たり前を疑う
業界で標準的に行われていることが生活者にとって当たり前のことかどうかを疑うことが大事です。日々、当然のごとく作業していることに大きな価値があると思うことが大事です。

・組み合わせて価値になる
似たようなスペックをまとめたり、性質の違うスペックを組み合わせることで、それをあらたなスペックとして見ることもできます。ひとつでは価値が低いように見えているスペックも合わさることで価値を見出せる可能性が出てきます。

・主観を持たない
これは「当たり前を疑う」と非常に似ています。主観は適格な判断をする場面でマイナスに機能することもあります。固定概念や好み、経験則など自分の内面にあるものさしで判断をすると新しいものを生み出すことはできません。自分自身の感覚が優れているのであれば、もうすでにあなたは何かしら成し遂げて、きっと有名になっているはずですよね。

・表に見えていないところを見つける
見えていないところにこそ本当の価値あるものが隠れていることもあります。むしろ、誰にでも見えているところはわざわざ伝えなくてもいいことであって、見えていない部分を見せてあげることがコアスペック発見につながります。

正しくコアスペックを設定できれば、ベネフィットも魅力的になります。自分の商品・サービスを今一度見直してみて、どんなスペックを持ち合わせているのかを確認してみてはいかがでしょう。

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