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チョコにしては甘ったるい

袋と鞄いっぱいのお菓子を見て

今年も芽依ちゃんは
目を輝かせる。


「晴仁、だいすきっ!!」


チョコだいすき、にしか
聞こえないのは僕だけ??


とかツッコむ間もなく

芽依ちゃんはガツガツと

大きいサイズのチョコを食べる。


ブランドとかより大きさ重視らしい。


「うあ、お酒の味っ」

「まぁ、そういうのもあるよね。」

「すごい!!オレンジが入ってる!!」

「最近流行ってるよね。」

「おぉー!!
チョコの中にキャラメル!!
こっちはピーナツも入ってる!!」

「それはどこにでも売ってるお菓子だね。」


塾のやつは小中高生からだから
スーパーで買ったみたいなのも多いから
そういうのは貰いやすいんだけど

問題はその

お母さんからのやつ。


塾からしたら顧客みたいなものだから
断って気悪くさせたら困る。

僕も嬉しくない訳じゃない。


ただ、本当、

申し訳なくなるくらい

良いやつなのだ。


「量は涼太が1位だけど
値段は晴仁だな。」

と、トラちゃんは笑っていたが

あながち否定もしずらい。

お返し、どうしようか。


「晴仁最高!!」


チョコを見ながらそう言った芽依ちゃん。

僕は思わず苦笑しながら
冷蔵庫から昨日作った
ガトーショコラを出す。


「はい、これは僕から芽依ちゃんに。」

「な、なんで…っ?!」

「丁度材料あったから。

芽依ちゃん、好きでしょ。」


逆チョコとかいうほど
大袈裟なモノではないけど

喜んでくれるかなと思った。


しかし芽依ちゃんは

全然、喜ばない。


むしろ少し怒ってるようにも見える。


「…芽依ちゃん??」


恐る恐る名前を呼んだら

キッと睨まれた。


「…晴仁はさぁ、

ほんっとに完璧すぎだよっ!!」


そして立ち上がり

僕の脇腹あたりを叩いた。


「な、なに??」


「かぶった!!」


そう叫んだかと思うと
芽依ちゃんは自分の鞄を指差す。


そしてまだ不思議そうにしてる僕に
思い切り鞄を投げてきた。


慌てて受け止めると

中には少し大きめの箱。


取り出してあけると

そこには少し形の崩れた
ガトーショコラが。


「投げたから形、崩れちゃった、」

「昨日作った時からその形なのっ」


不満そうにそう言って
僕のガトーショコラを食べる。


「あーあぁー。

どうせなら違うやつがよかった。」

「なんで??一緒に食べようよ。」


「私の作ったやつ、
マズいからいらない。

砂糖入れすぎた。」


一口食べて、
「美味しいよ」
って答えたら

「味覚壊れてるね」

って、

恥ずかしそうに拗ねた。



チョコにしては
甘ったるい







**


晴仁のチョコ、
できるだけ私が食べる。

食料確保と栄養補給も
もちろん、そうだけど。


もしもこの中に
すっごく美味しいやつがあって

晴仁がその人に
惚れちゃったらどうするの。






2012.02.15
hakuseiさま
あまったるい

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