武器さえ持ってりゃ何とかなるのか? いや、ならない。(反語)
戦争とか喧嘩の話じゃなくて、マーケティングとかブランディングの話。
■ 何を言うのか
「外から人を入れたい」というときに「○○で困ってます。助けてください」って言うのは、あんまり効果がなくて。なぜなら、基本的にどこの自治体だって困ってるし、ボランティア精神で助けにこられても困るし。(ボランティア精神で来て、何かの価値を生む事業を立ち上げちゃうようなすげえ人なら別だけど。)
それよりは「西和賀町に住む/関わると、こんないいことがありますよ」ということを、ちゃんと伝わる指標を示しながら、裏付けとともに主張したほうが刺さりやすいだろうとは思う。
んだけど、俺のように「変わってる」(と思われがちな)人に対して「西和賀町に住む/関わると、こんないいことがありますよ」と声をかけると、逆に冷めることもあって。
俺の場合は、「うわ、やば。この町、これからどうなるんだろう」という好奇心が最初の引っ掛かりだし、「いずれここから去ったときも、この町で地域おこし協力隊をやったという実績は、何かいいこと(仕事の単価を上げたり、仕事をもらったり)につながるだろう」というメリットを勝手に見出していたし。
イノベーター(周りから見たら「なんでそんなことするのか意味わからん」と狂人扱いされる人)とかアーリーアダプター(狂人扱いされる人を見て「こいつの近くにいるといいことがありそうだ」と考えるちょっとした狂人)は勝手に西和賀を見つけたり、勝手に課題を見つけたりするので、導線とか引かれても邪魔くさいだけ。
「西和賀町に住む/関わると、こんないいことがありますよ」って言葉に寄ってくる人は基本的にイノベーターとかアーリーアダプターのあとに来る人たちだろうな、と。
西和賀だと、イノベーターとアーリーアダプターの数がまだ足りないかな。
ポッと出てきたアイデアを「それ面白いじゃん。とりあえず試してみよう」って、協力しながらすぐに動き出せるような状況になって、ようやく足りてると言えるのかな、と。
■ 誰に言うのか
結局、誰をターゲットにするかなのよね。
仕事だと、たとえば「キツイ仕事でも短期間で稼ぎたい」って人と「そんなに金はいらないから、1週間に3日、半日だけ働きたい」って人に対して、声の掛け方は違うっていう話。(最悪な声の掛け方の一例「おまえの労働観は間違ってる!」。)
もちろん、「来てくれる人は誰だって歓迎!」ってのはあるにせよ、どこにも狙いを定めずに「誰でも来てください!」って言ったって、来ないし、来たらそのあとが大変よ。定着しないから。
(しかもほとんどの場合、実際には、「来てくれる(能力が高い or 従順な歯車のような)人は誰だって歓迎!」が真実。)
バイト情報誌の「風通しがいい」とか「上下関係がフラット」とか「笑顔あふれる」とかの文言がなぜバカにされるかというと、みんなそういうこと言うし、かつ、具体的な根拠が書いてないから。
それを謳う職場がめちゃくちゃ多いのに、それでもその言葉を選んでしまうことへの嘲りもある。
まあ、都市部ならそれでも来てくれる人はいるでしょうよ、だって人がいるからね。
同じように「田舎暮らしができます」とか「緑あふれる」とか「都市部にはないご近所づきあいがあります」とか、田舎は日本に腐るほどあるので、何も言ってないに等しい。
■ どのように言うのか
だから見せ方が大事。
でも、きれいに見せるだけじゃ意味がない。
町にしろ仕事にしろ、世の中どんどんきれいに見せる技術が上がってきていて、きれいな部分をきれいに見せるだけじゃ、やっぱ人は動かなくなっていると思うんよな。
きれいなものはありふれてるのよ。ほとんどは「きれいだね」で終わるでしょ。ツイッターでいったいどれだけの万バズが日々生まれてるかって話よ。
つまり、きれいに見せることだけじゃなくて、汚い(あるいはネガティブな、あるいはこなれてない)部分もできるだけそのまま見せることの重要性が増してる。
量販店で一番売れるのは人気の商品だし、同じ商品が並んでるなかでどれを買うかっつーと、ベタベタ触られてないやつ。
誰もが知る「東京」って商品や、地方都市のなかではめっちゃ頑張ってる「福岡」って商品と、同じ土俵で戦って勝てるわけがねーっていう。
でも、リサイクル屋でどの商品を買うかってなると、できるだけ傷がないやつを選ぶ人も多いだろうけど、「傷や汚れがいい感じ」って選び方もある。
傷や汚れが加わると、評価軸が変わるんすよ。
「このくらいの汚さなら受け入れられるわ」「この汚さ好きだわ」って寄ってきた人たちは、「思ってたんと違う!」って理由では離れていかないはず。
「いや、そんなとこ見せられない」って言うなら、汚い(あるいはネガティブな、あるいはこなれてない)ところを改善してからでないと人を呼んじゃダメだと思う。
「汚い(あるいはネガティブな、あるいはこなれてない)ところを見せてもいい」って言うなら、手っ取り早いのは、ロングインタビューと動画でしょう。
「こういう傷が入ってるの、嫌ですか? でもね、実はこの傷の具合がいいんすよ」って、じっくりセールストークする感じ。
■ オチ
↑
盛り込む内容はこのくらいで。
あとは「ロングインタビューとか、動画でのPRなんて頼んだら高いでしょ」「西和賀の人に頼めるならまだしも、盛岡とか仙台とか、東京からだと出張費もかかるしねえ」
↓
「いや、西和賀にもできる人いるよ」「え、うそぉ!?」
↓
「唐仁原ってインタビューしたり、記事書いたりしてるんだって」「しかも動画も撮るらしいよ」と自然な流れで説明し、いやらしくない程度にアピールする。
「あー。ちょっと今忙しくて、新規で仕事取ってないんすよ」
↓
「まあ、とりあえず、どんな内容かだけ伺ってもいいすか?」
↓
「へー。めっちゃおもしろいっすね。どのくらいの予算規模すか? あー。まあ、今回は初回だし、町内特別価格ってことで、それで受けますよ」
↓
町内で新しいお仕事ゲット♡
なるほど
完璧な作戦っスねーっ
こんなとこに書いて公開したという点に目をつぶればよぉ〜
まあ隠したところで意味はないのでぶっちゃけると、1日稼働で2万円なら町内の仕事は受ける。東京の企業から受けてる仕事だとその倍はもらってるけど。
■ 本当のオチ
ただし、インタビューや動画があっても、それ単体じゃ意味をなさないって話よ。
立派な日本刀を持ってても、敵がどこにいるか見えなきゃ斬れない。敵がどこにいるのか、着てるのはユニクロのフリースなのか、防刃チョッキなのか、近接格闘の腕前はどうなのか、そもそも本当に敵なのかを知らなきゃどうにもなんない。
敵は飛行機に乗ってるかもしれない。だったら敵を地面に下ろさせない限り殺せない。
そもそも日本刀というチョイスは正しいのか? 銃じゃなきゃダメなんじゃないか?
いや、待て。武器を持つことが本当に問題の解決に資するのか? 武器を持ってることで逆に狙われるんじゃないか? 刺激した第三者にまで牙を剥かれるんじゃないか?
みんな「とりあえず武器を持っとけば安心できるんじゃないか」って思っちゃうけど、何にも考えずに武器を手にしても何にもならねーんすよ。
ブランディングとか、マーケティングについて知らないってのは、手ぶらで突っ立ってたり、武器を持ってただ突っ立ってたり、武器を闇雲に振り回して、下手すると味方を斬ってるだけだったりってのと同じ状況で。
だから、俺に単発の仕事を依頼しても、ちゃんと効果が出るかっつうととても疑問。
じゃあどうしたらいいんだって、まずはこの本を読むのがよいでしょう。ブランディングの基礎知識に加え、マーケティングについての最低限の知識が身につきます。
かつて俺が携わった本の紹介になっちゃった(汗)(爆)←オイオイ。以上。
唐仁原 俊博 a.k.a. 西和賀町のやべーやつ / とうじんばら としひろ
フリーライター / 宅地建物取引士
元・岩手県西和賀町 地域おこし協力隊 / 舞台演出家 / ヤギ飼い
株式会社西和賀土地建物 代表取締役社長
大学生・怠惰な生活・演劇の三足のわらじで、京都大学を10年かけて中退した、フリーライター。
2019年4月から2022年3月まで、フリーライターと並行して、西和賀町役場に勤務(総務省「地域おこし協力隊」制度)。「人口5000人割りそうな町に、やべーやつがいっぱい来たら、やべーことになるんじゃないか」と思いたち、マジでやべーやつの呼び水となるべく、荷が重いながらも「やべーやつ」を自称する。
2021年度、宅地建物取引士資格試験に独学で合格。
2022年6月、株式会社西和賀土地建物を創業。
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