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シン・エヴァは地域おこしの物語である
※「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の重大なネタバレあり。
エヴァは関係性の物語だが、地域おこし協力隊の身分からすると、地域おこしの物語でもあった、という牽強付会。
地域の有力者(ゲンドウ)に呼ばれてやってきたボンクラ息子(シンジ)が何もわからないまま、ひとりよがりで散々失敗して地域が滅びるのがTVシリーズ及び旧劇場版。
新劇場版においても、雲行きは怪しかったが、自家中毒に陥りがちなところに割って入ってきたヨソモノ(実際には超事情通のUターン者)である真希波の振る舞いがループをぶっ壊した。
「エヴァ」は旧来的な「ハコモノ行政」。エヴァを建造しても必ずしも地元業者が潤うとは限らないし、使徒=迫りくる社会課題を退けたとしても、街には甚大な被害を及ぼす。
ゼーレ=中央省庁、ネルフ=地方自治体、ヴィレ=住民組織。
シンジは「ハコを建てろ」と言われ、何もわからないまま、とりあえずハコを建てる。だってそれが与えられた仕事だから。(序)
しかし、ハコを建てるたびに、誰かが傷つく。それでも、今までで一番の社会課題(第10使徒)に挑み、一番の仕事(綾波の救出)を成し遂げたはずだった。(破)
ところがどっこい。久方ぶりに街に戻ってみると、自分のハコ(だけのせいじゃないけど)によって、地域は滅んでいた。
ハコ建てまくった結果、財政破綻して、結果、えらいことになっていた。
自治体(ネルフ)と住民間(ヴィレ)は丁々発止。
低下した住民サービスには目を向けず、いまだにハコにこだわりつづける行政と、自分たちのアイデアと行動で現実を変えていこうとする住民組織間での、リコールや実力行動など激しい争い。
訳知り顔のカヲルにそそのかされ、もう一度、よりよいハコを建てようとするシンジ。しかし、コンサル的カヲルはいざハコが建つ段になって、顔色急変。
カヲル「あの、計画立案時の前提がそもそも間違っていたようでして…」
シンジ「いやいや、ここまで進めてきたんだから、やるしかないでしょ」
アスカ「おいやめろガキシンジ。はやくもこの街は終了ですね」
計画段階では完璧だったのに、いざ実行に移すと状況はさらに悪化。信頼しきっていたコンサルは退場し、地域に残されるシンジ。同業者(アスカ)もブチギレ。(Q)
(それでもシンジを見捨てないアスカと俺は結婚したい。)
そして、シン・エヴァ。
ハコばかり見ていたシンジは知らなかったが、滅んだと思っていた地域には、それでも人が生きていたのである。
財政破綻の結果、かえって人同士のよいつながりが生まれたところもある(第三村)が、高度に文明化された人間(アヤナミレイ(仮称))は、稲を手植えしてみていいなとか感じつつも、ネットとかスタバとかないとLCLに還元されてしまうのである。「人はよかったけど、ずっと住む環境じゃないね」ってやつ。
シンジは自分だけでなく、ほかの人々、地域住民にとって住みやすい街を取り戻す、あるいは創造するために、ゼーレやゲンドウの建てたハコも含め、すべてのハコの落とし前をつけるために、もう一度まちづくりに取り組む。(ヴンダーへの再搭乗)
街と都会のギャップに悩み、シンジの仕事に愛憎MAX、クソデカ感情を抱えた住民(鈴原サクラ)に恫喝されながらも。
(サクラ「もうあんなハコ建てんとってくださいよ」「でも、シンジさんが昔建てたハコ、よかったんよ。あれが建って、都会みたいになったんよ」「でも、やっぱあかん」「とりあえず軽く怪我させといたらええか」)
ただ、シンジはかつて地域をぶっ壊したハコ(初号機・13号機)を延命させるのではなく、対話のツールとして使うことにした。ハコも運用次第ってことよ。
対話のツールとして成り立つのは、長年、稼働を支えてくれた人(14年後の綾波)のおかげだったりする。
シンジ「あんたの言ってるまちづくりって、成し遂げたとして、結果、誰も住まない街になりますよね」
ゲンドウ「でも亡き妻との思い出があるんで計画修正とか無理!」
シンジ「いや、ほな、なおさら現実的な計画にせなあきませんやん」
シンジはそれまで自分が避けていた対話に挑み、首長含め、住民のニーズを丁寧に汲み取り、「地域はでかいハコによって成り立つ」という既成概念をぶち破った。
宇部新川駅周辺。どこにでもある地方都市。第3新東京市のように人類の叡智が結晶した都市ではない。第三村のように原始的共同体の喜びを感じられることはないかもしれない。しかし、確実に人は生きている。社会課題はある。しかし、対話した経験はシンジのなかに蓄積されている。
対話によって仕事を成し遂げ、ボロ雑巾のように疲弊したシンジには、事情に通じていて、深入りはせずとも適宜助けてくれる真希波(しかも超優秀)もいる。
かくして、破滅的まちづくりの時代は終わりを告げ、地道で嫌になるような、しかし、排除を前提としないまちづくりが続いていくのである。
まあつまりは、ヨソモノ(「破」からの新参)であり、ワカモノ(TVシリーズ・旧劇場版での疲弊を経験していない)であり、バカモノ(古い歌ばっかり歌いやがって)であり、かつ、自分のやりたいことがあって、さらには自分の器を超えるような危ない橋は渡らないけど、間違いなく優秀で、しかも責任転嫁しないし、ほんとは年いってるけど、周りにそうは感じさせない精神的若さを持つ、すげーヤツ(真希波)の存在が、いいまちづくりには欠かせない、ということですね。
そんなやつ、おるか?
地域おこしにはその地域にとっての安野モヨコが必要、というなかなか厳しい結論になってしまった。
......
11歳、中学に上がる直前、貞本版エヴァをたまたま目にしたことがきっかけで、エヴァ道に入門した。
当時住んでいた鹿児島ではテレ東系は基本的に放送されていなかった。東京(1995年10月)から遅れること1年半、97年3月から、テレビ朝日系列の鹿児島放送でTVシリーズの放映が開始。ちょうど俺が中学に上がるタイミングである。
それから20年以上。俺だってクソデカ感情を抱えていた人間のひとりだ。
アスカは間違いなく救われた。製作陣(庵野 てめェーだよ てめェー)に酷い目に遭わされ続けたアスカにとって、間違いなくハッピーエンドだ。最高だ。
俺だってアスカと結婚する夢は、まだ捨ててない。てか、14歳と35歳の結婚は世間から白眼視されるだろうが、28歳と35歳の結婚は何の問題もない。状況は改善されている。
がんばろう。
唐仁原 俊博 a.k.a. 西和賀町のやべーやつ / とうじんばら としひろ
岩手県西和賀町 地域おこし協力隊 / 演出家 / エンハンサー / エンチャンター
大学生・怠惰な生活・演劇の三足のわらじで、京都大学を10年かけて中退した、元フリーランスライター。ほんとは大してやばくないけど、最長3年の任期をフル活用するためにも、やべーやつを名乗ることにした。
ほんとに大してやばくない。
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