飛鳥の夢舞台
今年の夏、奈良を訪ねました。
橿原神宮(かしはらじんぐう)、久米寺(くめでら)、飛鳥大仏、石舞台、岡寺、高松塚古墳、橘寺(たちばなでら)・・・日本の古代ロマンの里・飛鳥地方に2泊して駆け足で巡りました。日本文化発祥の地とも言えるこの地は私にとって初めてで、色々と勉強になりました。
櫃原神宮に隣接して、聖徳太子の弟が建立したとされる久米寺があり、その古い縁起と有名な故事“久米の仙人”の話は、ここが出所と初めて知った次第です。
これは『今昔物語集』収録の有名なエピソードですが、久米寺の資料では、あの東大寺の建材をわずか3日間で全国より神通力で集めたともあります。こうした逸話に事欠かないのが、奈良の社寺の凄いところです。
穏やかな山に囲まれた平野の中にコスモスが咲き始め、1000年以上の歴史と天変地異や災害、戦禍など、その時代時代に人々の喜怒哀楽がありました。そこには人の力では成し得ないような出来事も多くあり、祈りが必要とされたのです。
「大切なものは目に見えない」と言います。まさに『魂』に接した時間でした。
人々の祈りが地層のように折り重なった飛鳥。
"百聞は一見に如かず”と言いますが、自らの来し方、行き方にあらためて想いを巡らせ、センチメンタルな気分に浸らせてくれた、盛夏の訪問でありました。
(住職 記)