未来コンタクトレンズ
未来が見えるコンタクトレンズが発売された。
このレンズは脳と連動し、1時間おきに1時間後の未来の情報を送ってくれる。
これでどんなことも予測でき、自らの危険は自ら回避できるようになるはずだ。
ある女性は、彼氏とデートの前に付けてみた。
すると、彼は彼女を映画館に連れて行くところが見えた。
それで彼女は映画館に合うように、皺になりにくいスカートと椅子にもたれかかりやすい髪型にした。
デートの途中に、また1時間後の未来が脳に送られてきた。
そこには喧嘩する2人の姿が映っている。
「一体どうして喧嘩するのかしら?」
彼女はその後は慎重に慎重に行動し、無事喧嘩することなくデートは終わった。
「このコンタクトのお陰だわ。これから毎日付けましょう」
そうして、皆がこぞってコンタクトを購入し、四六時中コンタクトを付けるようになった。
しかし、このコンタクトブームはあっという間に去ってしまった。
未来が見えると、みな未来のことしか考えなくなってしまったのだ。
デートの最中も、未来に起こることばかりを気にして男女は会話を楽しむことをしなかった。
学校の授業では、みな1時間後のテストの採点について考えていた。教員も、1時間後の放課後の仕事について考えているため、まともな授業は行われない。
国会ではどの議員も答弁後のメディアの反応ばかりに気が入って、きちんと受け答えをする議員はいなかった。
それでみんな、未来コンタクトレンズは使わなくなった。
「未来なんて、見えていない方がいいよね」
人々は口々に言い合った。
沢山の未来コンタクトレンズの在庫をみながら、レンズの開発者はぼんやりと呟いた。
「古来より、未来を予測することは人々の夢であったはずなのに、いざ現実になるとこんなものか」
そして全てのレンズを焼却炉に放り込んだ。
レンズはごうごうと音を立てて燃えている。
「全く、人はいつの世も無い物ねだりだ」
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このお話は、「今日は何の日」という企画で、今日が何の日かを自由に自分で決めてお話を書いています。今日は9月14日。未来の日です。▶︎ツイッターにて企画の話や創作の話をなどなど呟いてます▶︎http://twitter.com/toufucoromochi▶︎インスタグラムでは短いお話を画像で読めます(#30秒小説)▶︎ https://www.instagram.com/toufucoromochi
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