鏡の国の猫
目がさめると、知らない建物の中だった。
木の匂い、古い匂い、窓からはそよそよと心地良い風が吹いてくるのが気持ちいい。
散歩でもと、きしむ床をひたひたと歩いていると、曇った鏡の向こうに横たわる猫の姿が映った。
どうしたの?
近づいて声をかけると、薄い黄緑色の眼がこっちをみる。
今にも閉じそうなほど覇気はなかった。
「一緒にいよう」
僕は鏡の中にひょいっと飛び込んだ。
猫の名前はミーコといった。
ミーコは思ったよりもずっと懐っこい。
ふわふわの白と茶の毛は撫でるほどに気持ちいい。
でも触ろうとするとミーコはすっと逃げてしまう。
それでいて他のことをしているとふわっと身体を擦り寄せてくる。
ずるいよなぁ。
僕は思いながらもついつい撫でてしまうのだ。
2人で海辺に出かけると、魚を焼く匂いがする。
バーベキューかな。お刺身も貝もエビも沢山ある。
手をひらひらさせて日に焼けたおじちゃん達が呼んでくれて、僕たちはご相伴に預かった。
なんだかすごく美味しくて、魔法みたいだった。
帰り道は海風にさらされながら、僕もミーコもご機嫌で、くねくねと歩いては笑った。
いつのまにか陽は落ちていた。
再び鏡の前に立つと、誰かの声がする。
「おーい、ミーコ。」
ミーコを呼ぶ声だ。
「呼んでるよ」
ミーコが黄緑色の目でこっちを見て言う。
「帰ろうか」
鏡から出ると、そこには彼が立っていた。
「あれ?ここにいたの?」
いるよ、ここに。
僕はいつものように彼の元に駆け寄ると、ふわふわの毛をすり寄せた。
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