雨の中で彼女が待ってる
今日は雨。
窓の外はザーザーと音を立てて、辺りはじっとりと薄暗い。
僕はアパートの窓際に肘をついてもたれかかる。
雨の日は、彼女がやってくるー。
雨の中、彼女は傘を持っていない。
ただじっと、僕のアパートの向かいのカフェの軒先に立っているのだ。
湿気で湿った彼女の身体は、いかにも悩ましげで道行く人の視線を奪う。
「どうしたの?」
ただでさえ目を引く姿。
彼女は数分おきに声をかけられる。
しかし、彼女はじっと相手を見るだけで何も声は発さない。
雨の音。
車が通る度にあがる飛沫。
まるで映画のワンシーンを観ているようだ。
彼女は、きっと誰かを待っている。
雨に濡れた彼女の手を引いて、家に連れて帰ってくれる誰か。
でもそれは、雨の日だけ優しくしてくれるような相手じゃだめだ。
ずっと一緒にいられるような、運命の相手を待っているんだ。
ザーザーと降り注ぐ雨の中、彼女はいつまでもそこにいる。
やがて雨が小降りになると、彼女はその場を立ち去った。
去り際に、「にゃーん」と僕に声をかけて。
うちはペットは禁止だよ。
僕は彼女に手を振った。
彼女はくるんと踵を返し、振り返りもせず去っていく。
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