葬儀の現場から見える日本の情勢と未来の葬儀を考える
こんにちは、茨城県水戸市の葬儀社『橙縁社(とうえんしゃ)』です。
コロナウイルスの影響も含めて、葬儀の世界も急激に様変わりをしています。
そんな葬儀業界に身を置くものとして、様々な変化に考えさせられることがあります。
そこで今回は、今の葬儀の現場から見える日本情勢と、これからの葬儀を考え、紹介していきます。
葬儀の現場から見える日本の情勢と未来の葬儀を考える
つい20年ほど前まで、
・葬儀費用 = 200万円以上
なんて時代でした。
しかし、2000年から『家族葬』が生まれ、首都圏を中心に一気に広がりを見せたことから、葬儀の世界にも価格競争の波が押し寄せたのです。
この価格競争は、消費者にとって選択肢も増え、非常に良い傾向だと言えるでしょう。
葬儀の内容にも格差社会の縮図が
しかし、葬儀の選択肢が広がったことで、
・予算がある ⇨ 葬儀費用が安い
・予算がない ⇨ 葬儀費用が高い
という、逆転現象が起こっています。
『お金がある人の元にはお金が集まる』
葬儀の世界にも、格差社会の縮図が見えてきてしまいました。
メディアはいつの時代も無責任だ!!
『少ない予算でお葬式を!!』
非常に聞こえも良く、このままの内容であれば、私も大賛成です!!
しかし、無責任なメディアは、表面上の『葬儀費用』のことばかり取り上げ、大切な中身には触れません。
もちろん、メディアと言えども広告ビジネスな訳で、視聴者が付いてこなければ、経営が成り立ちません。
そして、テレビの若者離れが深刻なため、高齢者向けの番組企画をせざる得ないのは理解しています。
ですが、誰にでも響きやすい『価格』ばかり取り上げて、その実態やデメリットを紹介しないのは何故なのでしょうか?
例えば、葬儀で言えば『家族葬』。
確かに、近親者のみの温かい雰囲気で、私が一番好きなお葬式です。
しかし、『家族葬』は安い訳ではありません。
それなのに、
『家族葬は葬儀費用が○○円!!』
と、価格ばかりアピールして、実際の支出を紹介しないメディアは、あまりにも無責任過ぎます。
喪主の高年齢化
葬儀において、まず初めに決めなければならないのが『喪主』です。
簡単に言えば、お葬式を取り仕切る代表者です。
日本が経済成長し、成熟期を迎えていたころ、葬儀の『喪主』は
・40代~50代
の、いわゆる現役世代でした。
そこから、健康ブームや医療の発達もあり、日本の平均寿命は右肩上がりに上昇しています。
そのため、葬儀の『喪主』の年齢が、
・60代~70代
になっているのが現状です。
長生きリスクによる経済活動の変化
人が亡くなると、
・財産の相続
・保険金の受取
など、お金が動きます。
昔のように、『喪主』が現役世代であれば、養育費も掛かりますが、突然の収入の元、経済活動が活発になります。
極端に言えば、人が亡くなることで、世の中にお金が回りやすくなっていた訳です。
しかし、現在は違います。
『喪主』が退職・引退し、高齢化しているのです。
近年よく聞く話ですが、『長生きリスク』は顕著に現れています。
生活費はもちろんですが、医療費や施設の出費がバカになりません。
将来的にも、非常に不安を抱えている人達が多いのです。
結果、『喪主』として資産を引き継いだとしても、将来の不安のためにお金を使うことができません。
お金が世の中に回っていかないのです。
喪主の高齢化と長生きリスクの現状
近年、人が亡くなり、葬儀の打ち合わせに赴いた際、非常に聞く機会が増えた話があります。
それが、高齢者の長生きによる、遺族の出費負担の増加です。
遺族は、皆さん長生きを望んでいます。
しかし、老人介護施設の出費や、病院の入院費、家のバリアフリー改築費など、多額の出費があったことも良く耳にします。
『もっと長生きして欲しかったけど、大変だった』
これが本音なのでしょうね。。。
こんな経済状況の中、年々葬儀費用が下がっていることは、至極当然のことだと言えるでしょう。
葬儀の今後と未来
ここまで、書きなぐるように現状を紹介しましたが、葬儀の今後と未来についても考察していきましょう。
まず、絶対的に言えることは、葬儀の縮小化です。
現在でもすでに、規模の大きい一般葬は、目に見えて減りました。
人間関係が変化し、近所付き合いも亡くなった今、当然の流れだと言えます。
家族葬と火葬式が支流に
会社の経営者や役職者、商売をしている人など、社会的な人間関係的に規模の大きな『一般葬』を行う人は、一定数はいるでしょう。
しかし、それ以外の人の選択肢は、
・葬儀を行う ⇨ 家族葬
・葬儀を行わない ⇨ 火葬式
の2択になっていくはずです。
元々、日本は無宗教国家だと言えるはずです。
そんな中でも昔の人達は、仏教や神道に対する信仰心を持っていました。
しかし、その信仰心は年代・世代ごとに薄まっています。
信仰心の薄い人達にとって、故人を思い、悲しみ、偲ぶ気持ちはあっても、儀式に対する思い入れは無いに等しくなっていきます。
そのため、昔ながらのお葬式は、過去の物へと追いやられ、近親者のみで行う葬儀が当たり前となっていくでしょう。
葬儀の未来
あくまでも予測でしかありませんが、現状から葬儀の未来を考察してみましょう。
2040年前後をもって、ベビーブーム・団塊の世代の人口が一気に減少します。
その時を予測するに、
・火葬式 ⇨ 60%
・家族葬 ⇨ 30%
・その他
ぐらいの割合になるのではないでしょうか?
更には、『火葬式』の呼び名や形式が変化し、今よりも一般的になるでしょう。
現在『火葬式』を行う人は、多少後ろめたい気持ちが残る人もいます。
しかし、未来のお葬式においては、当たり前の葬儀であって、何も違和感を感じないのではないでしょうか?
最後に
今回は、今の葬儀の現場から見える日本情勢と、これからの葬儀を考え紹介しました。
喪主世代の高年齢化、これは現在の日本をよく現わしており、葬儀と社会活動が年々疎遠になっています。
それは、これから先も続き、加速していく予想ができることから、規模の大きな『一般葬』は特定の方のみの葬儀となり、
・葬儀を行う ⇨ 家族葬
・葬儀を行わない ⇨ 火葬式
の2択になっていくはずです。
年々簡素化していく葬儀ですが、決して故人に対して粗末にならないよう、気を付けていきたいものです。