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多くの人は考える順番を間違う[20240826]


先週は同志社大学大学院で講義を持っていた。
デジタルとかDXを正しく理解し、イノベーション創造の為の発想力を養成する講義だ。
科目名は「医工学特論特別講義-C1」と言う。
(ググったらシラバスが見られるかもしれない、ご興味があれば)
京都・京田辺市は連日37度ほどで、雨も降らず「激暑」。
一方、今日の東京は日陰に入れば風が吹き「激暑」では無い。
猛暑のピークは超えたのだろうか?

さて、今日はイノベーションアイディアの発想に役立つお話を。

大学の講義で以下のような話をした。

システム思考の「氷山モデル」である。

簡単に説明すると、目に見えているところは「氷山の一角」であり、見えていない水中部分の方が圧倒的に大きいということに注目した考え方だ。

目に見えている問題状況を解決しようと「小手先の対策」を考えては駄目だ。

顕在している「問題状況」にばかりフォーカスしているとイノベーションは創出出来ない。

私は、ソリューション・セントリックなイノベーションアイディアはスジが悪いと教えている。

それは、目に見える問題状況にフォーカスし過ぎているからだ。

問題状況を確認したら、何故それが発生してしまうのか?を問わなければならない。

「問題状況の確認」の次は「原因の追及」であるはずなのに「問題解決」のアイディアを考えてしまうミスが多い。

スーパーマケットで生鮮食料品の売れ残りを無くすアイディアを考える
という命題に対して、

売れ残りが発生しそうになったら「値引き販売」をする。

最初は10%程度の値引き、それでも売れなければ20%の値引き。

更に駄目なら30%以上の値引きも辞さない…。

ここで「自称」イノベーターのアイディアだ。

「お客さま」に会員になっていただきメールアドレスの取得から始まり、値引き状況をメールでタイムリーにお知らせするのだと言う。

お店は売れ残りが無くなり(売れ残りが無くなる訳ではないが…)、お客さまは安く買うことが出来るので「Win-Win」なのだとか。(!?)

正直なところ小学生でも考えそうなアイディアだが、そもそも本末転倒している。

お店は値引きしても売りたいのか?

出来れば値引きしたくないのではないか?

お客さまのメールアドレスを取得するのは「原価割れしそうな品物をお客さまに買ってほしいからでは無い」のだ。

毎日仕入れる生鮮食料品の「その日の需要」は読めないのが当たり前だ。

しかし、売れ残りをゼロにする為には確からしい需要予測能力は必須だ。

では、どうすれば良いか?

需要予測量よりも少なく供給すれば良いだけで解消だ。

商いの順番で言えば「仕入れて」「並べて」「売る」訳だから、売れ残りの原因は「仕入れ」にある。

仕入れなければ売れ残りは出来ない。

順番を考えれば仕入れ量を削減すれば良いのである。

例えば、閉店が20:00だったとすると17:00か18:00までに完売するように仕入れすれば良い。

「売れ残れりは、翌日の惣菜売場の材料にすれば良い」だなんて言うのは愚の骨頂だ。

生鮮食料品は、野菜でも魚でも「仕入れたその日が一番美味しい」。

翌日になったら「味は落ちる」だろう。

ちなみに、売れ残りが無い状況を作れば「廃棄料金」「機会損失」などが発生しないので、その分だけ商品代金を低く抑えることもできる。

これこそが「Win-Win」ではないか。

「閉店までの2時間は、何を売るつもりですか?」

答えは簡単だ。

「生鮮食品以外のモノをお買い求めくださいませ」

最優先順位は「食料品の売れ残り」を無くすことであり、閉店直前まで生鮮食料品をお買い求めになる客を逃がさないことではない。

私に言わせれば「順番が違う」のである。

多くの人は「現状が正しい」に慣らされていて、それを不文律のように勝手に捉えて「考える順番を間違う」。

システム思考と確証バイアスについての説明である。

小西さんは、大学で何を教えているのですかと問われることが多いが、意外に良い話をしていると思っていただけたことを願う。

合同会社タッチコア 小西一有

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