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『何か書かせたい星人』に負ける私の日常

ー 東京都内、某所、数十年前 ー

とある本の著者、兼、占い師の方が、異空間の自宅に招いて私に告げる。

占い師(何か書かせたい星人 2号):
「あなた文章を書くといいわよ。私の占いにそう出ているから」
    

私:「は??」

その数年後、

ー 大阪府内、TV局近くの某カフェレストラン ー

ランチを食べながら、かつてのAD仲間、ひとまわり年下の姫が言う。

姫(何か書かせたい星人 3号):
「姐さん、不幸なん? なんで占いなんか行くの? 必要ないやん。それより私を占ってみてよ。結婚式場は辞めるの? まさかまた放浪? いつか、体験本とか書いてみてよ。一回全部読みたい」 

私:「そうやねぇ……」

その翌年、

ー 大阪、高級ブランド集う某ファッションビル内、某ワインショップ ー

真昼間っからワインを飲みながら、東京から出張してきたという某月刊誌の編集者の方が言う。

編集者A(何か書かせたい星人 4号):  
「いや、体験談、面白かったです。最初の一行見て、どんな人かと気になって。お会いできてよかった。他の方の体験談と一緒に私がまとめてエッセイにして次の号に載せることになりました。出来たらお送りします。楽しみにお待ちください。一度本気で書いてみたらどうですか。何かあったらここにご連絡ください」

私:「はぁ、ありがとうございます……」
心の声:(いや、結局私の文章は、使わんってことやんね)

そして、ほとぼり冷めた数年後、ライターの友人がSNSでコメントする。

友人A (何か書かせたい星人 5号):
「ねぇ、なんか、書いてみたら? noteとかどう?」

私 : 「noteねぇ……」


ご覧の通り、数年おきに、私の前には「何か書かせたい星人」が出現する。
その都度、気が乗らないふりをしながらも、
その気になって、何かしらアクションを起こす私。

思えば、最初の「何か書かせたい星人 1号」は、小学校一年生の憎き担任。
某新聞社のコラムに、《みんなで詩を書いて応募してみましょう》という担任の思いつきに嵌められた、子供たち。

「誰にも言えずに秘密にしていること書いてみようね!」

担任は、そう言って優しく笑った。

冷静に考えたら、なんで秘密にしていることを投稿するんだ。
今ならわかる当たり前のことが、いたいけな子供にはわからなかった。

人の詩を勝手に新聞社に投稿した担任は、教え子の入賞に喜び勇んで家族に電話してきた。

私は、打ちひしがれた。
人生初の、目の前真っ暗事件。
絶対にバレてはいけないことを、そこに書いていた。

いろんな意味で、打ちひしがれた。
一番上の賞ならまだ諦めもついたのだろうか?

家族は、爆笑しながら私を叱った。

『お前は何故それを、詩にするんだ』と、あの頃の自分に言ってやりたい。
子供心に、罪悪感から書いた文章だった。

何て素直な、綺麗な心の私。(どこに行った)
副賞の小さなメダルは母の宝となった。

自慢? そんなわけあるかいな。(興奮すると出る関西弁)

それから私は、二度と詩など書くまいと心に誓った。

その時、私は筆を折ったのだ。

読む専門になった。


それから「何か書かせたい星人2号」に出会うまで数十年。

そこからまた何年かしたら、こんな楽しい飛び道具が現れた。

「何か書かせたい星人」よ。
これで満足か?

私は満足だ。

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