目が見えないイシイシとDIOR展に行ったらおもしろすぎた話
ある朝突然目が見えなくなって7年目のブラインド・コミュニケーター、イシイシとDIOR展行ってきました。
予約が取れずてんやわんやと噂のDIOR展。なんとイシイシの印籠(視覚障害者手帳)があると、同行者2名と共にするりとインできるのです!
というわけで、旅は道連れ。イシイシと、小笠原和葉さん と、コマツというボディワーカー3人での鑑賞ツアーに。
しかし、イシイシの視界は基本的に白い霧の中。
ただ同行してもらうのもなんなので、普段の5倍以上の集中力で展示を鑑賞し、日頃培ったあらゆる想像力と言語化力を駆使して、展示物の状況を同時通訳的に伝えようと、脳みそフル回転。
そんなコマツと和葉さんの言語化の結果が下記になります。
「すごくフォーマルな白いウェストシェイプのジャケットに合わせた帽子がほぼ三度笠です。」
「あっ!この帽子も三度笠インスパイア系」
「すごくタイトなベアトップのワンピースの太腿から足首にかけて、かなり写実的でまるまる太ったピチピチの鯉がいる。なぜか合わせてるのは、桜の枝をただ縛ったような、薪拾いとしか説明できない帽子です。」
「ドバイのショッピングモールにありそうな2フロア吹き抜けに滝が流れる空間に、夜会のドレスが6×6プラスαで40着くらい並んでるんだが、さながら全員がDior着てるスターウォーズのジェダイ評議会。」
「ここのドレスがいちばん似合う人はたぶん美空ひばり。心に「川の流れのように」が聞こえてきたよ。」
「アイコンバッグのLADY Diorがアーティストとコラボしたものが並んでるんだけど、なぜか腎臓がチャームとしてぶら下がってます。」
「いや、腎臓じゃなくて胆嚢と胆管じゃない?ほらあそこが…解剖して見たあのまんま。(和葉さんもコマツもアリゾナ解剖経験者)」
「………たぶんそれ、豆ですよ。(美術館広報の友人ちあこさん)」
恐るべし、ボディワーカーのバイアス!
そんなことをなるべく小声で囁き合いながら鑑賞していたら、後ろからトントンと肩を叩かれる。
「あっ!声大きくて迷惑だったかな…」という心の声と共に振り返ると、恐縮した女性が。
「あのー……皆さんの鑑賞コメントがおもしろすぎるので、後ろからついて行ってよいですか?」
もちろんです!
ということで、Diorの素晴らしさが吹き飛ぶ近年まれにみる美術鑑賞となりました。
そんな不意の同行者となってくれた方の記事がこちら。
さて、ちょっとだけ真面目な話をすると、柴田あゆみさんの切り絵の森。
もはや狂気と紙一重の美でやはりすごかった。
触れば一発でわかるだろうあの切り絵の森のすごさは、(当然触れないので)言葉では伝えきれなかった。
あゆみさんによる発芽する「肺」の切り絵と「蝸牛」の版画、2つの作品を所持しているのだけど、あの時購入しておいて良かった…。
「徹子の部屋」にも出演されてたし、もうすごいところに行ってしまうんだろうな。
にしても、今までの美術鑑賞はなんだったんだろう。
心惹かれる作品をつぶさに観て、感じたままを口に出してみる。
私がキャッチするものと、和葉さんがキャッチするもの、アンテナがちがうのも面白いし、イシイシに伝えるために、キャプションも集中力もって丁寧に読む。
ソマティックな身体感覚と、情報整理と言語化の左脳を行ったり来たり。
ダイアログ・イン・ザ・ダークに参加した時もだけど、新しい感覚の扉が開いた気分。これは、これからの美術館体験が変わるわ。
イシイシ、貴重な経験を一緒に味わわせてくれて、ありがとう!
■ 小松ゆり子 official web site
http://yurikokomatsu.com
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