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「ひろせ、豊劇ボランティアスタッフになったってよ」

僕がカウンターに入っていると、映画を観終えたお子様連れのお母さんが
「次にこの映画館に来る子供たちのために『U18みらいチケット2枚』ください」
と購入されました。「おぉ、リアル・ペイフォワードだ…」と新年早々気持ちが温かくなった瞬間。

このカウンターは兵庫県北部唯一の映画館「豊岡劇場」、通称「豊劇(とよげき)」のカウンターです。

ITベンダー社員&週末大学院生の廣瀬達也です。
昨年末 僕は「豊劇ボランティアスタッフ」になりました。


映画観終わったお客様に感想を書いてもらっています

2023年はお正月から映画館にいました。
「お正月映画を観に行った」ではありません。ボランティアスタッフとしての映画館運営側のお手伝いをしていました。見習いとしてチケット売ったり、コーヒー出したり、アンケート配ったり・回収したり…。
この映画館には2枚1組1,000円の「U18みらいチケット」なるチケットがあります。
・大人が購入しカウンターに預ける。
     

・それが、映画を観に来た子供への500円引きチケットなる

という仕組みです。

これが冒頭でお母さんが購入されたチケットです。

豊劇との関わりを少し振り返ります。

■「汽車」に乗って「豊劇」へ
僕の故郷である養父(やぶ)市は豊岡市のお隣りにあります。高校生の僕は汽車に乗って何回か豊劇へ映画を観に行きました。昭和の頃のことです。

■「豊劇」が復活する
2015年中小企業診断士合格と同時に東京から神戸へ転勤しました。入会早々に参加した兵庫県中小企業診断士協会イベントのディスカッションテーマが
「クラウドファンディングで復活した豊岡劇場を盛り上げるにはどうするか」的なことでした。豊劇が「閉館していたこと」そして「復活したこと」を同時に知った瞬間です。

■「豊劇」が休館する
一度東京に戻りまたまた転勤で2回目の神戸生活(但し勤務地は大阪)を始めたのが2021年4月。転勤と同時に兵庫県豊岡市内にある兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科へ社会人大学院生として入学しました。平日は会社員として神戸から大阪へ通い、週末は大学院生として神戸から豊岡へ通う生活の始まりです。
2022年度上期に大学院で選択した「地域資源マネジメント論」なる科目で「映画館ってまちの地域資源と言えるのでは?」と考え豊劇を調査・発表テーマにしました。

発表資料の表紙。この発表準備から豊劇が気になり始めた

調査を始めて知ったニュースが「2022年8月末で一時休館決定」でした。

「豊劇の未来を考える会」に参加しました

おいおい、どうなってる?
と、このときから急速に豊劇のことが気になり始めました。

■「豊劇」がサポーター&ボランティアスタッフを募集する
9月になると「一般社団法人豊岡コミュニティシネマ」が設立されました。そして10月、2023年に復活を目指すらしいこと、復活に向けてサポーター(会費を払うお客側)、ボランティアスタッフ(お手伝いする運営側)を募集していることを知ります。応援はしたい。しかし、兵庫県北部に住んでいないと具体的お手伝いは難しだろいう。と考えた僕は「サポーター」になりました。

■「ひろせ、豊劇ボランティアスタッフになるってよ」
サポーターになってみたものの、やはり運営側が気になりモヤモヤしています。どうやら、
「自分が直接関われないところで、豊劇がいろいろ変わっていくのは困る」
というワガママな気持ちが自分中でうごめいていました。
この気持ちを収めるには、「何かのかたちで運営関わることが必要だ」と気づき、結局「ボランティアスタッフ」に申し込みました。
「診断士としてコンサルに入る」ではなく、「ボランティアスタッフとして仲間とともに活動する」が始まりました。

■とはいえ、なかなかに厳しい
冒頭の「U18みらいチケット」販売のような場面に接すると「映画館っていいよね」と思います。「応援します」「続けてほしい」などの温かい声を聞くとありがたいです。劇場に来られる方々は映画好きでもあり、応援派でもあるので、温かい声をいただくことになります。しかし、劇場に来ない方々のほうが圧倒的多数です。

国交省調査などで1つの映画館が成り立つ人口規模は12万人程度と言われています。豊岡市の人口は8万人弱。兵庫県北部全体で16万人弱。数字的には大変厳しい現実があります。
人気作品を仕入れることもそうそう簡単ではない。ネットテレビの普及も進んでいます。

「市民の」とか「コミュニティ」などの言葉が持つ耳当たりの良さとか、「ノスタルジー」とか「想い出」はもちろん大切。しかし、それだけでは経営は難しいです。そもそも「映画館って必要なのか」という「哲学的」とも言える問いになんらかの形で答える必要があります。

映画以外の収入源も作るべし、遠方のファンも作るべし、それらのためには宣伝が大切。SNSを活用すべし。きっとそうです。
診断士の実務補習の報告書などではさらりと書いていたフレーズも、現場に関わっていると、「では具体的に何をどうすればよいか…」とちょっと立ちすくみそうになります。
SNS活用については理論政策更新研修ポイント追加も兼ねてコチラを受講しようと考えたり。。。

それでもちょっとワクワクしている自分がいます。
年末年始で見習いとしてカウンターの中に入ると、映画館の風景が少し違って見えました。
豊劇のある、そして自分の故郷である兵庫県北部のことを改め考え、映画館という現場の空気を吸いつつ心を温める。そして、診断士としてのアタマも冷静に回す。そんなことが持続できれば今年はいい年になりそうです。

カウンターの中に入ると映画館の風景もちょっと違って見えます

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