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自作詩朗読「アネモネ」
アネモネ 音もなく 痩せた風は みなしごのように ひもすがら 砂埃と戯れる 遥かな日に 焼き滅ぼされた 街の片隅 崩れ朽ちた ビルの瓦礫の陰で 永劫の眠りから ふと目を覚まし 咲いたアネモネ 死女のまなこは まるであのときのまま 致命的に流し尽くした 鮮血のドレスに その小さな顔を浮かべて もう何にも見ていない まるい無垢の瞳が 青空を探している 窓のない部屋の白い壁も 君を圧し潰す天井も 震える手に ナイフを握って 恐怖と憎悪に歪んでいる 目の前の男の顔 人類のかなしい顔も 赤いアネモネ 死女のまなこは まるであのときのまま もう何にも見ていない まるい無垢の瞳が 彼方を探している
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