かあさんが村(実家)に作った花壇
かあさんは花が好きだったから、花壇を作った。
港の宿舎でもフラックスだのコスモスだのを植えて、見事に咲かせていたが、そういえば、一年草が多かった。
港の宿舎はとうさんの転勤で住むことになった家で、とっちゃんが生まれた村には自分の家がある。
ときどき帰る村の庭には、かあさんは低花木や宿根草を植えていた。
いつか帰るつもりだったのだろう。いや、定年になったら嫌でもここに住まなくてはならない、と思っていただろう。嫌でも?いや、ここが故郷、愛着がある。かあさんは、とっちゃんも定年になったら戻ってくる(遥かな見通し!)と思っていた。
かあさんが特に好きだったのは、エリモシャクナゲとか低花木だ。色変わりの紅葉も昔から。春先に真っ赤になって、注目度抜群だった。
襟裳。そういえば、エリモミセバヤも花壇の縁を飾っていた。
襟裳にはかあさんの姉さんがいて、姉さんに頼まれてコンブ漁の手伝いに行っていた。その行き帰りに好きな花を摘んでは、庭に植えていた。
とっちゃんはよく手伝っていたから、それがどんな崖に生えていたか知っている。花を見たら風景も見えるようだった。