いちばん好きなコナンの映画『ベイカー街の亡霊』 | 野沢尚が好き②
先日の野沢尚が好き①に続く第2弾。
もともと先日の記事の中にコナンの映画の話も入れてたんですけど、長くなりすぎたので分けました。
野沢尚が初めてアニメ映画の脚本を書いた、シリーズ6作目劇場版名探偵コナン『ベイカー街の亡霊』(2002年)は、今でも1番好きなコナン映画です。
その時点で既に野沢尚が好きだったので、「まじか!野沢尚コナン書いてくれるんだ!!!」とめちゃくちゃテンションあがったことを覚えています。
どうですか?どうですか?
あらすじだけで、どえらい魅力的じゃないですか?
1年で5年分成長する人工知能
天才少年
仮装体感ゲーム
100年前のロンドン……
鳥肌たったひと。
はい。(挙手)
楽しそうで動悸がしたひと。
はい。(挙手)
あらすじの中だけでもぞくぞくするような言葉がいくつも……実際はこれに工藤優作やシャーロックホーム、切り裂きジャックまででてきて、ミステリーファン、コナンファンにはたまらん展開になっています。
あのですね、これ2023年についに興行収入100億円の壁を突破して130億を記録した翌年、勝負の2024年公開の新作じゃないですからね?
上映されたのは20年以上も前の2002年です。
なのに人工知能とか仮想体感ゲーム機とか、今でも全然古くないんです!
むしろ今やってもちょうどいいくらいの内容。いや、昔より未来に進んでいる分逆にちょうどいいかもしれない。
未来の話って難しいと常々思っていて。
あ、『ベイカー街の亡霊』はもちろん未来の話じゃないですよ?いつも通りコナンくんが主人公です。
ただ、技術的な視点では未来を描いていました。物語に登場する新型仮想体感ゲーム機「コクーン」はこんなゲーム機あったら世界中から注目を集めるだろうなと今でもワクワクするものです。
これがもっと先のドラえもんがいる世界とか、AIが発達しまっくてAIがみんな暴走しだしだ世界とか、何も装置をつけないでその世界に存在できる完全メタバースの世界とかだとなんかまだちょっと遠いんですよね。
そんな中、仮想体感ゲーム機「コクーン」はちょうどいいんですよ。
あの卵型のカプセルに入り、頭に機器を装着、蓋が閉まると催眠状態になって、意識がゲームの中に行くって、なんかちょうどよくないですか?
完全にあの装置に座って体を預け、頭にも機器を設置することで、なんとなく脳へ刺激を与えつつ、触感、嗅覚あたりはどうにかなりそうな、その他の部分はわからないですけど、でもなんかどうにかできるんじゃないかなと素人に思わせるそのギリギリのライン。
さて、この『ベイカー街の亡霊』が他の作品と大きく違うところは、コナンくんがいつもの使っている阿笠博士の発明品を全く使えないところです。
推理に必要な蝶ネクタイ型変声機と腕時計型麻酔銃、犯人を追うのに欠かせない犯人追跡メガネ、犯人を捕まえるためのキック力増強シューズ……
いつもこれらの発明品を使って犯人を捕まえているコナンくんですが、仮想現実の中では博士の発明品も役に立ちません。犯人追跡メガネも麻酔銃も身につけてはいますが、ゲームの中ではそれらはただの「モノ」です。
100年前のロンドンという舞台を飛び道具として用意したからこそ、いつもの発明品に頼らず、自分と仲間だけで解決しなければいけない状況にコナンくんを追い込んだのです。
そんなとこスケボーで走れます?!
どんだけキック力増強してんの?!
という、いつものなんでもあり展開(それはそれで好きなんですけど!)を封印。
一緒にゲームに参加している子供たちは次々とゲームオーバーで退場していく(ゲームの中で死んでしまうとゲームオーバーとなり、全員がゲームオーバーになるとゲームに参加している子供は本当に死んでしまうという状況の)中で、コナンくんは徐々に追い詰められていきます。
しかもですね、少年探偵団の子供達も灰原哀ちゃんも、挙句の果てには蘭まで、みんなコナンくんを助けるためにゲームオーバーになるんです。
このゲームをクリアするのはコナンくんしかいない、コナンくんを助けるしかない、とみんなちゃんとわかってて、全てをコナンくんに賭ける。要は自分の命をコナンくんに託していくわけです。
そこがもう既にグッときてしまうというか……。
自分の命を他人に託すって相当信頼してないとできないですよね。コナンくんが実は新一だと知ってる灰原哀はまだわかるとして、蘭までコナンくんを守るために崖下に身を投げるんです。
しかし、ここで突然コナンくんが弱気に。
暴走する列車から生還する方法がわからず、珍しくめちゃくちゃ弱気。なんならゲームクリアを諦めそうになります。
新一(しんいち)ーーーーー!!!!!!!
何諦めとんじゃーーーーーー!!!
みんなお前を助けるために死んでいったんだぞ!お前ならゲームをクリアしてくれると信じて死んでいったんだぞ!!!!
こんなとこで諦めんなーーーーー!!!!!!!
という私の叫びが通じたのかはわかりませんが、その後いろいろあってコナンくんは無事にゲームクリア。
で、一緒にゲームに参加していた少年が実はノアズ•アーク=亡くなった天才少年ヒロキくんなんです。
ヒロキくん……。ヒロキくんとコナンくんが生きてる間に出会えたらすごくいい友達になれた気がする。ヒロキくんが自殺するようなこともなかったかもしれない。
自殺した天才の知能がコンピューターの中で生き続け、最後には自分で自分の命を再び断つ展開は切なく、「安らかに眠れ、ヒロキくん」というコナンくんの声があまりに優しく、コナンを見ていて初めて泣きました。
「またコナンを書きたい」と言ってくれていた野沢尚が生きていたら、今どんなコナンを書いてくれたんだろうと時々考えます。
100億を叩き出せる今なら、技術も発展してる今なら、灰原哀人気も高まっている今なら(次は灰原哀にクローズアップして書きたいと言ってくださってました)、野沢尚が書きたい話が書けたかもしれない。
青山剛昌とのスペシャルタッグで200億を叩き出すような、とんでもない劇場版コナンが誕生したかもしれないと思うと、とても残念です。
野沢尚先生が亡くなってもうすぐ20年も経つことに驚きます。
今でも『青い鳥』が好きです。『ベイカー街の亡霊』が大好きです。
そんな前のやつがまだそんなに好きなの?
と笑ってくださったらと勝手に想像して、勝手にちょっと嬉しくなります。
先生の作品、これからもずっと大好きです!
おしまい。