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『三谷幸喜「short cut」』|三谷幸喜映画祭③私がカメラマンだったら吐く驚異の「完全ワンカット」

あ、まだやってました。
1人三谷幸喜映画祭。


と言いつつ、今回は映画ではなくWOWOWで放送されたドラマです。
でも、ドラマWで放送された112分のドラマなので、もはや映画みたいなもんですよね?


ということで、三谷幸喜監督•脚本による『三谷幸喜「short cut」』(2011)のあらすじはこちら。

男はエリートサラリーマン。女はその妻で広告会社勤務のキャリアウーマン。二人は結婚して10年。お互い仕事が忙しく、すでに夫婦関係は完全に冷め切っている。妻の祖父の葬儀の帰り、山道に迷い込んだ二人。周囲に誰もいない山奥で、気兼ねなくののしり合う喪服姿の夫婦。果てしない口げんかの末、徐々に二人の関係に変化が訪れる。

prime videoより



三谷幸喜初のテレビドラマ監督作。
一度もカメラを止めない脅威の「完全ワンシーン・ワンカット」です。


三谷幸喜の完全ワンシーン•ワンカットと言えば『三谷幸喜「大空港2013」』ですが、『三谷幸喜「short cut」』はその2年前に制作された「完全ワンシーン•ワンカット」第1弾の前哨戦のような作品。


『三谷幸喜「大空港2013」』は、竹内結子、香川照之、石橋杏奈、池松壮亮、生瀬勝久、オダギリジョー、戸田恵梨香など超豪華俳優陣が出演する、これぞ三谷幸喜という群像劇でしたが、『三谷幸喜「short cut」』の登場人物はまさかの3人。
内容は中井貴一と鈴木京香のほぼ2人劇。
舞台でも絶対成り立った、いやむしろ舞台でやらせてあげたかったと思うほどハードな内容です。


何がハードって、ロケ場所ですよ。
山道で迷う夫婦が口喧嘩をしつつお互いを理解していく内容なのですが、山道がマジで山道。
よし、ワンシーン・ワンカットで2時間ドラマ撮ってやろう!となって、よくもまぁ初めての舞台をあんな山道にしたもんです。
マジで結構な山道なんですよ。登ったり下ったり、中井貴一さんも鈴木京香さんも本当に大変そうでした。あれ、途中セリフがちょっと飛んだり、転びそうになったり、そういうこと絶対ありますよね?今、アドリブじゃないかな?と思うようなところもありましたが、どうなんでしょう?
2時間のワンカット、しかもあんな山道を歩きながらでさぞかし大変だったと思います。
『ラジオの時間』『ザ•マジックアワー』に出演された鈴木京香さんと、『みんなのいえ』『ザ•マジックアワー』『素敵な金縛り』に出演された中井貴一さん。このお2人を完全に信頼しての打診ですよね。


そして何より大変だったと思うのは撮影するカメラマンさんです。
あの山道、歩いている時は基本カメラマンさんは後ろ向きで歩いてるわけですよね?想像するだけでぞっとする……。


山道で木や枝や葉も多い場所なんで、時々立ち位置によっては木や葉が邪魔になる時あるんですよ。そういう時にカメラが位置をすーっと移動されていて、うわ、大変そうだなと思いました。


このドラマはほぼ2時間なんで、どうにかして撮影途中でカメラマン変わってるんのかなと想像して見てたんですよ。だってあの山道で2時間取り続けるって腕死にますよね?
と、思っていたら、エンディングのテロップでカメラマンの方の名前お1人でした。


(驚愕)

……マジでお疲れ様でした!!!!



もちろん、主演のお2人も大変なんです。
それは当たり前にわかります。
でも、2人は万一転んでも、セリフを一瞬飛ばしても、致命的なことにならない限りどうにかリカバリーができる部分もあると思うんです。


でもカメラマンは転んだら一発NGじゃないですか?


中井貴一さんと鈴木京香さんという超ビッグネームを迎えて、2人がボロボロになりながらワンカットの演技をしているところで、中盤以降もしくは後半あたりで自分が転んだら終わりってめちゃくちゃ怖いですよ。私だったら本番前日プレッシャーで吐いてます。


カメラマンは山本英夫さん。
三池崇史や井筒和幸、三谷幸喜と組むことが多い映画カメラマンらしいです。
ちなみに1960年生まれだそうで、こち「short cut」を2011年に撮影したとすると当時51歳。


51歳でこれ撮りましたか……。
2時間カメラを抱えて集中力を途切れさせず、あの山道で、あのドラマを撮ったんですね。

凄すぎ……涙!!!!



ちなみに内容はいつもの三谷幸喜ほど面白くはないかも。※個人的な感想です。
見ている途中、私は突然意識が遠のいて(寝そうになって)、夫から「え、寝てんの?!」と声をかけられました。
群像劇の1つとしてあの2人がいたらめちゃくちゃ面白いと思うんですけど、基本的には2人でずーっと口喧嘩をしているので個人的にはちょっと間延び感がありました。
登場人物も少なく、場面転換もなく、舞台的な雰囲気もあるからか一部演技が大げさすぎるというか、多分演技を多少大げさにすることでドラマに緩急をつけようとしている気も……。


ただ、これをやったのは凄いし、「完全ワンシーン・ワンカット」の手法は面白い!
これに付き合ったスタッフと役者もすごい!
何よりカメラマンがすごい!!!←何度も言う。


京香さんにあんなに葉っぱ食べさせないで〜!!!


同じ「完全ワンシーン・ワンカット」の『三谷幸喜「大空港2013」』をまた見たくなりました。



おしまい。


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