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ドラマ10『宙わたる教室』|少し暗い教室に溢れる痛みと希望

ドラマ10の『宙わたる教室』がいいです。


初回からよかったんですけど、回を重ねるごとによくなっているので是非見ていただきたい!


主演は、数年前からネットニュース等で色々憶測記事を書かれることも多くなってしまった窪田正孝くん。私も正直「前よりなんとなく表情に覇気がない気がするな」とか「確かに顔色がちょっと悪い気がする」とか思っていた時もちょっとあったんですけど、『宙わたる教室』では私が、きっとみんなが見たかった窪田くんを久しぶりに見ている気がします。


寡黙なんですけど、相手のことをよく見ていて、よくわかっているような。それでも不用意に相手に踏み込みすぎないような。でも静かに大事なことを教えてくれるような。頭がよくて冷静で、いつも穏やかで、優しい空気感をまとっている。
そんな感じ。


そう、私はこういう窪田正孝が見たかった……!と嬉しくなってしまうような、この役は窪田くんが1番似合う、と思わせてくれるような先生役を演じています。


『宙わたる教室』のあらすじはこんな感じ。

東京・新宿にある定時制高校。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。負のスパイラルから抜け出せない不良の柳田岳人(小林虎之介)。授業についていくことを諦めかけた、フィリピン人の母と日本人の父を持つ越川アンジェラ(ガウ)。起立性調節障害を抱え、保健室登校を続ける名取佳純(伊東蒼)。青年時代、高校に通えず働くしかなかった長嶺省造(イッセー尾形)。年齢もバックグラウンドもバラバラな彼らの元に、謎めいた理科教師の藤竹(窪田正孝)が赴任してくる。
藤竹の導きにより、彼らは教室に「火星のクレーター」を再現する実験で学会発表を目指すが、自身が抱える障害、家庭内の問題、断ち切れない人間関係など様々な困難が立ちはだかり……

公式サイトより


原作は伊与原新さんの 『宙わたる教室』。
なんとこれ、とある定時制高校の科学部が科学研究の発表会で優秀賞を受賞し、「はやぶさ2」の基礎実験に科学部として参加することになったという実話から着想を得て生まれた小説らしいです。


窪田くんは「生徒たちに希望を持ってほしいんだ!諦めないで絶対夢を追いかけてほしいんだ!」という感じの熱い先生ではありません。
生徒たちのことをよく見ていて、彼らの本質のようなものを何となく感じ取ってはいるものの、彼らの私生活については踏み込み過ぎず、あくまで「先生」としての立場から「勉強」や彼らが興味を持つ「知識」を教え、共有していきます。


その距離感が、ちょっと物足りない気がする時も時々ありつつ、でもやっぱり心地いいのです。


それぞれに様々な問題や悩みを抱えている生徒たちは本当に生きづらそうで、例えば自分が彼らに関わる立場だったらと想像しても、どうしてあげたらいいのかわかりません。
他人にはどうしても踏み込めない領域があり、「先生」と言ってもそこを変えることはやはりとても難しい。どんなに助けたいと思っても、他人にできることは限られているのが現実だと思います。


そんな中で、窪田くんは、静かに穏やかに、彼らに「科学部」という居場所を用意します。
窪田くんのこの「科学部」についての熱量が本当にちょうどいいんです。
ただ自身の興味があるだけのような、生徒たちのために作ったような、でもやっぱり窪田くんがただやりたいだけのような。
科学部を作りたいと言った割にはそこまで熱心に勧誘をするわけでもなく、悩んでいそうな生徒に軽く声をかけるだけ。来たい人が来たい時にくればいい、そんな雰囲気で、科学部は少しずつ定時制の生徒たちの「居場所」になっていきます。


見てると毎話ごとにどんどん定時制の人たちを好きになっていっちゃうんですけど、その代表格が、文字の読み書きに障害がある小林虎之介くんです。
彼は難しい数式はあっという間に解けるのに、「文章が読めない、書けない」というその一点で「努力が足りない」「頭が悪い」と決めつけられ、不良になってしまった少年です。
態度も口もガラも悪いですが、「勉強したい」という気持ちがなければ働きながら定時制高校に通うなんてできないのはわかりますし、彼のその「学びたい」という純粋な思いを、どうにか大切にしてあげたいという気持ちになります。


色々重なり、全てが面倒になって悪い方向に流されてしまいそうだった小林くんですが、窪田くん演じる定時制高校の先生の存在が、ギリギリのところで彼を踏みとどまらせてくれました。


今、科学部で楽しそうに実験している顔を見ると嬉しくなります。
本当はずっと、ちゃんと勉強したかったんだな。ちゃんと勉強したくて、いろんなことに興味はあって、でも字が読めないことでうまくいかなくて、不良も楽しくてやってたわけじゃなかったんだろうな、ずっと辛かったんだろうな。


授業ではタブレットで音声教科書を聞いていますが、それとは別に、前話で読み書きの教室にも通っていることがわかって驚きました。
文字の読み書きの障害のせいで、これまで辛い日々を送ってきた小林くん。今更それが「自分のせい」ではなく「障害のせい」だったことがわかっても遅いと泣いていた彼ですが、それでも彼はちゃんと自分の障害と向き合ってちゃんと前に進んでいたんです。


仕事をして、定時制高校に通って、科学部で活動して、読み書き教室に通って……

お前めちゃくちゃ忙しいじゃん!!!


とツッコミながら泣いてしまう。
勉強したい、学びたい、という彼の気持ちに、ようやく寄り添ってくれる人ができて、その環境が整いつつあることが嬉しい。


自分が吸っていたタバコも妻の病気の一因だったというイッセー尾形の話を聞いた後、1人でタバコを吸おうとして、でもやっぱり止めた小林くん。


……めちゃくちゃいい子じゃん!
今周りに誰もいないのよ!副流煙のことは気にしなくていい状況なの。でも、誰も周りにいなくてもタバコを仕舞った小林くんが好き。


もっともっと、科学部の生徒たちと、どこまでもいってほしい。


窪田「正式な部になったことですし、せっかくなら何か目標を立てませんか。どうせ目指すなら目標はデカいほうがいい。たとえば学会発表なんてどうでしょう」


学会発表!!!!
そう、ついに彼らの挑戦が始まります。
今からでも、是非『宙わたる教室』を見てほしい!!!

ほんと、こういう窪田くんが見たかった…!


生徒たちの辛い事情や痛みが詰まってるようにも見える、夜の薄暗い教室。
それでも、今確かに希望が溢れ出そうとしているような、そんな瞬間。

科学部のみんな、
どこまでも、どこまでも、行ってくれ!!!


おしまい。

毎話、エピソードタイトルも素敵なんですよね。

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