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ボードゲームの対象年齢について

私がゲーム制作を始めた頃、8歳だった次男はもう11歳になっています。
つまり、私が新しく作るゲームの多くは「8歳だった次男は理解できるかな?」という基準で考えています。

とはいえ、もう目の前にいない8歳の次男をイメージしながらの制作です。
「これ、8歳には難しいんじゃない?」なーんて言われたら、ちょっとドキドキしちゃうわけですよ、えぇ。

ま、実際、私が制作した「Topping」というピザショップ経営のゲームをプレイしてくれた大人に言われたんですよ。

戦略ゲームの対象年齢は難しい!

ボードゲームの箱や説明には必ず「プレイ人数」「プレイ時間」と並んで「対象年齢」が記載されていますよね。
これはボードゲームを選ぶ際に、大切な指標となります。

けれど、この「対象年齢」をどう決めるか、実は制作者としていつも頭を悩ませるポイントなんです。

設計で対応できることもあるにはあるけど

たとえば、プレイ人数はゲームシステムの設計時に決めてしまうものですし、プレイ時間ならテストプレイを繰り返せばすぐに分かります。何回も遊んでみて、実際に何分かかったかを記録すれば「30分~45分」といった具体的な数字を設定できます。
(だいたい時間が短めに書かれている気がしますが、そこは置いておいて)

しかし、「対象年齢」に関しては一筋縄ではいきません。
子どもと大人では理解力や集中力が異なりますし、ルールの読み解き方や勝ち方を考えるアプローチも大きく異なります。

私自身、パーティーゲームやアクションゲームというよりは、しっかり遊べるファミリーゲームを制作しています。
つまり、コミュニケーションが楽しいね、というよりは、しっかり考えどころがありつつも、子どもから大人まで楽しめるゲームづくりをめざして作っています。
で、毎回「このゲームは何歳以上が妥当なんだろう?」と考え込んでしまうのです。

で、先の「これ、8歳には難しくないですか?」というお話。

確かに「Topping」は戦略を考えたり、資源をうまく管理したりする要素があって、ルールを覚えるのに少し時間がかかるかもしれません。
ですが、私の次男は8歳の頃にこのゲームをプレイし、楽しんでくれていました。

最初は「いやいや、普通に8歳児が楽しんでいたし…」と思いましたが、そのうち「うちはボードゲーム好きな家庭だから、次男は特別だったのかな…?」と疑心暗鬼に。

身も蓋もない話

前述の迷いはほどなくして払拭されました。
理由は簡単。ご家族で試遊後に購入していただいたところ、5歳の男の子でもちゃんとルールを理解してプレイしてくれたことが分かったからです。

試遊しているときから、「あれ…普通に分かってるよね?」とは思っていたのですが、帰宅後にまたプレイを熱望してくれたらしく、そこではサポートなしで遊んでくれたようです。

このような例は、この彼だけではありません。
別のゲーム会では7歳の女の子が楽しくプレイしていました。

どのゲームでも、難しいという大人はいるのが実際のところ

率直に言って、これまでも大人が難しいというゲームを、子どもが理解して楽しんでいるケースは見てきました。
要は、年齢じゃないのでは?という身も蓋もない話。

だから、「何歳から遊べますか?」という質問を受けるとき、それに対する答えは曖昧なものになりがちです。
「8歳以上」と書いてあっても、大人でも難しいと感じる人がいれば、5歳でも夢中になって遊ぶ子がいるのが現実です。

ゲームデザイナーの視点から

では、ゲームデザイナーから見て対象年齢は全く関係ないかと言われると、そうではありません。

漢字や英語の表記はなるべく避けるのが無難です。
私が制作するゲームは多言語対応の意味も含めて、アイコン中心で言語依存がないようにしています。

また、複雑な計算の要否にも注意が必要です。
計算できた方が有利になるのは好ましいと思いますが、それが成果に圧倒的な差となって表れてしまうのも厳しいものがあります。
私はなるべくサイコロのような運要素や、覚えきれないくらいの傾向値としての数を含めるようにしています。

フレーバーは没入感を生むだけでなく、既知の情報の再利用という効果もあります。
ピザの具材を市場に買いに行く、ピザを提供したらお金がもらえる、という程度のフレーバーはルールの理解をサポートしてくれるでしょう。
一方、三国志や戦国時代の関連知識を常識としたシステムは、厳しいと感じる人も出てきてしまうかもしれません。

細かくいえば、誤飲防止などコンポーネントでの配慮もあるのでしょうが、今回それは少し置いておきましょう。

結局、何歳から遊べるかは誰が決める?

最終的には、対象年齢を決める際に「何歳から遊んでほしいか」という制作者自身の思いが反映される程度でいいのかなと思います。
制作の段階で「このゲームは、子どもでもできるようにしよう」と考えればシステムやデザインに一層の配慮をすることになるでしょう。

一方で、購入する側の家族もまた、自分の子どもにこのゲームを与えたいかどうかで判断するでしょう。
不安だったら試遊するのもよいかと思います!

子どもの探究心は大人の予想を軽く上回ります

つまり、対象年齢の設定は制作者の「この年齢層に楽しんでほしい」という願いと、購入者の「この子どもに遊ばせたい」という思いの交差点に過ぎないのです。

さらに、大人の思惑なんて子どもたちには通用しません。
結局、「興味を持ったら、それが適齢期」でよろしいかと。

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