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【作品02】あおい森

あなたの街にはこのような場所はないだろうか?

若い樹々で作られた森で、
近隣の人からは『あおい森』といわれていた。

そばを通りかかると
森から自分を呼ぶ声が聞こえてくるという噂があった。

ある日そばを通りかかると声が聞こえたので木のそばにやってきたものがいた。


どうやらここから聞こえるというところに耳を当て、
木の節からそっと中を覗いてみるとなんと中に吸い込まれてしまった。

木の中に広がる世界は、日常目にするものと形にかわりはなかったが、
全く違うところがあって、見るもの全てが青かった。

遠くに見える節の先の世界は、色があるが、
空しか見えないために本当に青の世界が広がっているようだった。

辺りを少しみまわすと花々が咲いている

一つ一つの香りは弱いが
数の多さが相まってその匂いを強くしていた。

青以外が存在しない世界は奇妙なもので
正常な感覚を狂わせていく

しばらくするとその匂いに酔ったようになり
いつの間にか眠ってしまっていた。

どのくらい眠ってしまったのだろうか?
目を覚ますと誰かが顔を覗き込んでいる。

あなたは? と聞くと
声が聞こえたほうにきて、木の節を覗いたら
ここにいた と答えた。

声がしたほうへ、
ここは共通している
皆、声に引っ張られている。

声とは不思議なものだ。
我々は声によって判断し、
感情を左右される。

彼らは、どうやってここから抜け出そうと相談するが、
視界に広がるのは、花と、節から除く青い空。

取り込まれた人たちは木の栄養となって
ひっそりと過ごすのです。

内容なんて大したものではない。
声の調子が一番だ。
でなければこんなに気にならない。

われわれが少し声をかければ、
誰でもこっちにやってきます。

大したことではありません。
そういうものなんです、人間とは。

あなたの身近な人はこんなふうにして
消えているのかもしれない。

あおい森で今日もあなたをお待ちしています。

文・写真 ふくだやすのり

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