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【Tottori HOPES】鹿野町地域おこし協力隊|津田 夏海
Tottori HOPESは鳥取県内で活躍している地域おこし協力隊を紹介するマガジンです。鳥取県内の市町村にやってきた背景や、その人の取り組むミッション、あるいはその人自身にスポットをあて、紹介していきます。今回は、鳥取市鹿野町地域おこし協力隊として、Iターン移住をした津田夏海さんをご紹介します。
津田夏海
出身:大阪府
属性:Iターン移住者
担当市町村:鳥取市鹿野町
メインミッション:
空き家活用の中で生じる古道具や古材の資源化、ストアの設立・運営
鳥取市鹿野町は、人口3300人ほどの小さな城下町。山々に囲まれた自然豊かな環境のなか、歴史情緒あふれる古いまちなみが残っている。
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この鹿野町には、縁もゆかりもないまちで、自分の憧れを実現しつつある女性がいる。2024年1月に地域おこし協力隊に着任した津田夏海さんだ。
大阪で生まれ育ち、前職はアパレルショップ勤務だった津田さん。
地方創生やまちおこしに興味があった、というわけではない。
ただ、「思い」と「縁」が一人の女性と鹿野町をつないだ、そんなお話をお聴きした。
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つながる
津田さんが働くのは、「いんしゅう鹿野まちづくり協議会」というNPO法人。
客観的にみると、ショップに勤めていた彼女がどうしてまちづくりを?と思ってしまうが、津田さんもタイミングがよかったと言うほど、なんとなく思い描いていた夢の実現を考えた時に、偶然が重なり、転機となった。
大阪のセレクトショップ店に勤めていた津田さん。
昔から古道具が好きだったが、その店舗で取り扱うのは新品の商品。服は好きだし、そのお店で働くことも好き。ただ、なんとなく思い描いていた夢の実現を考えたことが転機となった。
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「昔から、いつか田舎で暮らしてみたいな、という漠然とした憧れがあったんです。それから、古いものが好きだったので、将来はのんびりとした土地で古道具を扱うお店なんてできたら楽しそうだなあ、と。それで、ふと地方への移住について調べ始めたら、たまたまそのタイミングで “鳥取市鹿野町で古道具屋をはじめませんか”という募集があって…
これちゃう?って。(笑)」
彼女の夢の解像度があがった瞬間の話だった。
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鹿野との出会い
初めて鹿野に行った時のお話を聴いてみた。
「めっちゃいいとこ!ってなっちゃって。去年の夏頃にはじめて来てみたら、ハス畑が満開で、お堀には白鳥が泳いでて、昔ながらの古い建物が並んでいて、、、時間の流れがゆったりしていて、なにかの物語に入り込んだような不思議な気分になりました。
そんな魅力的な街並みなのに、観光地として力を入れているわけではないんです。ただ、鹿野町に住む人たちが、この町が好きで、守りながら生活をしてきたからある風景だと聞いて、それがまた素敵やなあと思いました。」
鹿野町は津田さんにとって、新鮮さと安らぎを与えてくれる町だった。
その後、他の地域の視察や地域おこし協力隊の求人を探してみたが、最も惹かれ、生活を想像できたのは鹿野町だった。何より鹿野町で、鹿野町の人々と働くことにワクワクしたらしい。
そして無事にいんしゅう鹿野まちづくり協議会で働くことになり、今に至る。
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「とにかく楽しそう、って来ちゃいました。(笑)」
長年住んだ土地から、全く知らない土地へ、「楽しそう」でやって来ることはそう簡単なことではない。
この思い切りの良さが、鹿野町と津田さんをつなぎ、憧れの実現につなげたのだ。
いんしゅう鹿野まちづくり協議会
津田さんの働く「いんしゅう鹿野まちづくり協議会」は、町をよりよくしようとするNPO法人である。
メインとなる事業は空き家問題の解決に向けた取り組みだ。空き家を活用して移住支援、店舗・施設の運営、イベントの実施などを行う。
中山間地域の田舎と呼ばれる鹿野町には、もちろん多くの空き家がある。
だが、すぐにどうにかしようと動き出す所有者さんは多くはないという。
お盆に人が集まるから、仏間があるから、倉庫として使ってるから、などの理由からだ。
だが、住む人がいなければ家の劣化が早くなるのは当然で、手放したいと思ったときにスムーズに貰い手が見つからないという事態になることが多い。
だからこそ、手遅れになる前の段階で、空き家を活用していこうという活動を行っている。
たとえば、移住したい方が知らない土地ですぐに家を買うというのはハードルが高い。そこで、まずは賃貸で住むことができるように、空き家の所有者さんと入居希望者をつなぐ媒介となるのが、このいんしゅう鹿野まちづくり協議会だ。
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そんな団体の掲げるスローガンが「やらいな!しょいな!」である。方言で「やってみよう!してみよう!」という意味合いだそう。まち協の創成期からの掛け声であり、団体の活動指針らしい。
その根底には「子供たちが大きくなったときに、いつか帰ってきたいと思ってもらえる場所づくり」という思いがある。
そして、この「やらいな」という言葉が津田さんの活動を支えている。
yaraina-古道具-
「yaraina」という屋号で、津田さんは古道具店を運営している。これこそが津田さんの地域おこし協力隊のミッションである。
空き家の所有者からすると一見何の価値もない家財かもしれないが、見せ方、売り方によって、価値を持つ。そのようなものが集まる場所があれば、それを求めて人が集まる。
そこから生まれた人のつながりから、さらに新たな価値を生み出す。
そんな新しい循環を生む場所を作ることを目指して、今はイベント出店をメインに活動している。
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移住者だからこそ、地元の人間とは異なる視点を持ち合わせ、昔から古道具が好きだった津田さんだからこそできる魅せ方がある。自分の理想を実現するために大阪からやってきた一人の女性が、この鹿野町に新たな価値を生み出す。
今後のこと
津田さんに今後のことについて聴いてみた。
「まだ来たばかりですが、この鹿野町という町にどんどん惹かれているので、もっと知りたいし繋がっていきたいと思います。そして、まだ鹿野を知らない人たちにもぜひ知ってほしい。そんなきっかけを作っていくためにも、まずは yaraina をしっかりと形にしていくことが目標です。」
この日お話を伺ったのは、津田さんのお気に入りのパン屋さん。以前当財団のイベントにもゲスト出演いただいたことのある、「一心庵」さんだ。このお店は山口県出身でIターン移住をした岩佐さんが、古民家を改装し、営業に至っている。お店の雰囲気も良く、手作りの豊富な種類のパンがいただけるとのことで人気らしい。津田さんとも仲よしな様子だった。
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鹿野町に初めて訪れたときに、知らない物語の中に入り込んだような感覚だったとおっしゃっていた津田さん。
そんな津田さんとお話をしている際、津田さんに一通の連絡があり、私に向かって、
「鹿の狩猟とか興味ありますか?これからどうかって誘われたんですけど、もしよかったらご一緒に(笑)」
もはやその物語の一員のようだった。
聞くと、移住してから知り合った猟師の方に、たまに誘ってもらっているとのこと。そんな貴重な機会に初対面の私を誘ってくれたのだ。
自分のつながりを作るだけでなく、人と人とのつながりも生み出す。
そんな津田さんが、今後の鹿野町にどんなつながりを、どんな価値を生み出すのか、本当に楽しみだ。
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NPOいんしゅう鹿野まちづくり協議会
「yaraina」の今後の活動予定
10/6@智頭ふるもの市 (@chizu.furumono)
10/20@楽座楽市 (@rakuza_rakuichi)
11/17@鹿野蚤の市 (@shikano_nominoichi)