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突然の足の腫れ「まさか、これががんなのか?」

2017年9月、まだ暑い台風が近づく鹿児島。
その日も熱帯夜だったと思う。短パンズボンで寝ようと、ふとベッドに足を放り出した。「あれ?なんか腫れている…」
その日その瞬間から、私の闘病ははじまった。

「勘違いかもしれない」そう思い、翌日、地域の太鼓チームでの練習で、仲の良いチームメイトに何気なく足を見せた。「ねぇ、ちょっと見て。腫れてるかな〜?」するとチームメイトが顔色を変えてこう言った「いや、腫れてるどころか、すごい大きくなってるよ。変だ、絶対に変だ、病院に行け!」

帰ってから母に電話をし、症状を伝え何科に行くべきか相談した。
リンパが悪いのだろうか?痛くも痒くもないけども…。そんな調子だったと思う。ただ異常なまでの腫れに、少し怖いな、と思った。母は「足だからやっぱり整形外科じゃないかしら?」と素人ながらにアドバイス。
整形外科と言われても、このまちには整形外科はない。
田舎に引っ越してきたばかりでどこの病院に行ってよいか分からず、地域の仲良しのお兄さんに尋ねると、隣まちの整形外科が有名だから、そこがいいんじゃないか、とアドバイスを受けた。

今考えると、私の奇跡はここから始まっている。私が紹介された病院は、指宿市の今林整形外科。そこは鹿児島大学病院との連携病院だった。病院に行くと、大学病院から派遣されている先生が丁寧に説明をしてくれて…、どうもその雰囲気から普通じゃないことはわかった。「悪性か良性かわからないが腫瘍です。今週末に大学病院の腫瘍専門の教授が回診にくるので、診てもらいましょう」と。
その日は、MRIだけしか撮らなかったと思う。先生のその言葉を聞いて「腫瘍ってなんだっけ?」という具合だった。でも帰りの車の運転をしながら、ハッとした。「え、がんってこと?」そこから、寝ても冷めても、スマホで症状を調べてしまう。。

3日後、再度その病院に行った時には、重々しい雰囲気が漂っていた。まず、そのお偉い教授さんの周りには助手の先生と看護師さんとで2人ぐらい助っ人がついていて、なんの処置もしないはずなのに、すごい圧力だった。

そして、その教授先生はこういった「これは悪性を疑って検査をしましょう。ここではできないので、大学病院に移ってください。あなたはまだ若い。ちゃんと治療をして、みんなと同じように80歳まで生きるのですよ。」
私は、先生の話を聞きながら耐えられず、涙がこぼれた。そんな死に直結するような病気が私の足にあるなんて。(…実際、この記事を書くために思い出すだけで、涙がこぼれる。)

私の病名は「悪性軟部腫瘍(粘液型脂肪肉腫)」という希少がんで、人口10万人あたり約3人しか発症しない非常に珍しいがんだった。対比するのはどうかと思うが、女性のがんで多い乳がんの発症率は、全国で年間約9万人(国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html )だが、軟部肉腫は全国で年間1540人というデータがある。( 国立がん研究センター 希少がんセンターhttps://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/soft_tissue_sarcomas/index.html )

それゆえに、実は見逃してしまう医者もいるということが、後々わかってきた。特に整形外科ではない科に初診でいってしまうと、迷宮入りとなるケースもあるという。その点、私は整形外科に最初からかかることができ、しかも、鹿児島県内で軟部腫瘍の名医と言われる先生に、すぐに診てもらえたということが奇跡に近かった。(この教授先生に診てもらうのに、相当待っている患者さんがいることも後々に知ることとなった。)

だけど、その時点でもう私の腫瘍はステージ3だった。通常、軟部腫瘍は広範切除(腫瘍をすっぽり広い範囲で取り除くこと)が基本とされているが、私の場合、左の太ももの大きな筋肉と筋肉の間にすぽっとはまった細長い腫瘍で、神経、骨、筋肉、血管に全て接していることから、みつかった時点では、手術不可能という結果だった。一番最初の教授先生の説明で圧倒されたのは、本来はこの状態だと「左足の切断しか方法がない」と言い切られたことだった。前述の先生が言った80歳まで生きるというのは、(ただし、左足は義足をつけた状態で)というカッコ書きが入るようなニュアンスだったと思う。そんな話を聞いて、よくもまぁ、下手くそな運転をする私がよく、家まで無事に帰り着いたもんだ、と思う。先生にも「事故には気をつけるんだよ」と言われたのを覚えている。

つづく

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塔子 |  がんと義足と、ともに生きる
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