カクヨム攻略5~評価頻度・後編~

 前回、小説家になろうの『完結ブースト』について語った理由を説明し忘れていた。
 なぜ前回のような話をしたのかというと、私自身がなろうで『完結ブーストでメシ食ってる状態』だったからだ。

 初商業化作品の『農閑期の英雄』も、当初は25000字程度の作品として一度完結させた。
 この時の最終話時点でのブックマークは9。

 この辺の話は当時エッセイに書いたので、興味ある方はこちら↓

私と底辺作者が集うスレ ~初心者なろう作家の底辺脱出作戦~+おまけのエッセイ

https://ncode.syosetu.com/n9873fk/

 ここで完結ブーストが発生し、農閑期の英雄はハイファンタジーの日間2位に浮上。
 スケベ心を出した私は続きを執筆し、約一年後に書籍化した。
 
 次にコミカライズ中の『俺は何度でもお前を追放する』、こちらの簡易版も終了時点のブックマークは37、評価pt142、総合評価は216と全く振るいませんでした。
 それがまた完結ブーストして、1日最高6400ptを獲得し、白泉社様からコミカライズ打診を頂いた⋯⋯にもかかわらず、「完全版書くのでそれ待って判断してください!」とお願いし、快諾していただき、「完全版でいきましょう!」と言って頂いた⋯⋯という訳です。

 まあつまり、私は小説家になろうで完結ブースト以外のやり方で数字を取る方法を知らなかったわけだ。

 そしてカクヨムに参戦。
 右も左もわからないままカクヨムに投稿し、小説家になろう同様に中編を仕上げて完結⋯⋯してもサッパリ結果が出なかった、となる。

 これがこの記事の1で語った『なろうのやり方をそのまま持ち込んでもダメ』という良い実例、ってわけだ。

 ではカクヨムの『完結作品』の状況はどうかを見ていこう。

 カクヨムの★を、なろうの『評価ポイント10000』に当てはめると、★3000くらいだ、と言える。
 これは10点=★3で見た場合、10000÷3.33…だからだ。

 ここに小説家になろうだと完結ブーストしやすい十万字以下、という条件で検索してみよう。

検索条件



結果

 なんと13件しかないのだ
 そしてこれを50000字に変えると⋯⋯。


50000字以下

 驚きの3件だ。

 つまり私が小説家になろうで結果を出した「完結ブースト作戦」は、カクヨムでは「約束された敗北」なのである。

 ちなみに小説家になろうで『総合ポイント1万以上、十万以下で完結または短編』で検索した場合、4825作品がヒットする。
 総合ポイントなのでブックマークも含まれるが、それにしたってって差が出るのだ。

 そして、カクヨムの50000字以下の中で純粋な短編と呼べるものは1作品のみだ。
 他二つは、ギリギリ四万字代。

 その唯一の短編がこちら。


フォルカスの倫理的な死 枕目先生

 枕目先生の「フォルカスの倫理的な死」。
 ジャンルはSFで、2016年に投稿されている。

 評価頻度を計算すると

1276÷1578=80.86...…

 で、およそ81%。

 こんな数字を出しているのはこの作品のみだ。

 他二作品の評価頻度はそれぞれ59%と33%。
 カクヨムにしては高いが、それでも、小説家になろうで15万字ある『【完全版】俺は何度でもお前を追放する』と、文字数は三分の一程度なのに、同等の評価頻度だ。

 しかも評価頻度59%の作品はこちら


何度ガチャを引いてもレアが出ないから腹いせに書いたファンタジー 槻影先生

 そう、あの槻影先生なのだ。
 これはもう「ファンが多い槻影先生だから出せた結果」と見てもいいんじゃないかな、と個人的には思う。

 さてここで私は前回『完結を機に評価してください!』とお願いする事で評価されやすくなる、と説明した。
 これ自体は間違っているとは思わない。

 ただ、だとしたら『同じようなラストを迎えた作品なら、評価を促す力も同等なので、同じような評価頻度になるのではないか?』という予測が立つ。

 完結した! 感動した!
 この作品を評価したい!

 これ自体はあまり変わらないのではないか、と。

 では、カクヨムの仕組みを全く知らなかったせいで連投しまくって、あまり結果が出なかった『【完全版】俺は何度でもお前を追放する』の、評価頻度を見てみよう。

 

カクヨム版 俺追

 233÷795=0.294…

 つまり評価頻度は29.4%。
 なろう版が60%弱だと考えると、約半分だ。

 じゃあ俺追はカクヨム読者に合わなかったのでは?
 というと、そうでもなさそうだ。

 というのも、俺追なろう版の評価平均は9.7(画像にもあるように、2021年投稿のなろうハイファンタジー作品で、ポイント上位100作品だと一位だ、えっへん)。

 カクヨムの★を10点満点にしつつ、平均点を出すと

 678÷233×3.33....=9.6995.…

 と、お客様満足度9.7はほとんど変わらない。
 満足度が変わらないなら、評価を促す力もそんなに変わらない、と考えるのが自然だろう。

 ではなぜ、このような差が起こるのか?

 ここからは私の仮説なので、間違っている可能性がある。
 なので話半分で聞いて貰いたい。

 まずはこちらを見て頂いたい。
 今回もなろうファンDBさんのデータを使用させて頂きます。
 なろうファンDBさんは↓

 

転生したらスライムだった件 伏瀬先生


 なろうのレジェンドオブレジェンド、転スラのデータだ。
 評価頻度は、なんと8.11%。

 10人に1人も評価していないのだ。

 他の作品を見ても、レジェンド級の作品は軒並み評価頻度が低かった(全部見たわけじゃないけど)。

 これはたぶん、「以前のなろうは評価機能が使いづらかったから」だと思われる。
 現在は最新話以外からも評価できる小説家になろうだが、前は「最新話からのみ、文章と内容は別々、しかもクレクレは禁止」と、ユーザーが評価機能を利用するハードルが高かったのだ。

 ここで私の仮説となるのだが。

『評価機能の使い易さは、評価頻度に直結する』

 という事。
 簡単に言ってしまえば『カクヨムはなろうよりも、評価機能が使いにくい』って事だ。

 実際カクヨムの評価機能はブラウザ版は最新話から、かなり下のギフトやらサポーター表示やらを乗り越えないといけない場所にある。
 アプリ版は、最新話をさらにスクロールする必要がある。

 この『ひと手間』が、なろうよりも評価頻度が低い傾向を生み出している、と思われる。

 カクヨムでは、作品フォローが10000を越えているような作品で、★がフォローを上回るようなケースは稀だ。

 ★がフォロー数を超えるには、満点でも評価頻度が33.3%を超える必要がある。
 現実的なラインだと、評価頻度が37%くらいだろう。

 実際これを達成している作品がこちら。


社畜剣聖、配信者になる以下略 熊野げん骨先生

 こちらの作品の評価頻度が約37%。
 ただこの★がフォローを越えているケースが出た時に、カクヨム作者たちが結構ざわついた。
 それくらいレアケースなのだ。

 つまり、カクヨムでは評価頻度がなろうほど上がりにくい。

 そのため、完結を機に評価してもらう、というのもなかなか難しいため、その他の状況(完結してもトップページにほとんど表示されないとか、週刊ランキングがメインだとか)を加味すると、完結させるメリットは薄い、という事になる。

 ただ、前回私は言った。

「カクヨムにも、完結ブーストがある」

 と。

 では最後に、カクヨムの完結ブースト。
 その正体をお教えしよう。


↑これ

 完結させると、めっちゃ応援が増えます。
 他の完結作品を見ても、最終話だけ応援めっちゃ多かったです。
 そう、応援は最終話読んですぐ押せるので、読者はほとんど手間要らずなのだ。

 むしろ、多くの読者は

「あー面白かった! ん? 評価お願いしますか、えっと、これかな?」応援ポチッ。

 で、満足している可能性すらある。
 なのでカクヨムで完結ブーストが起こるとしたら

「完結作品のみ、評価がこの『応援』のすぐ下に表示される」

 みたいな仕様変更が無い限り、無いのかなと思われます。

 これがカクヨムの完結ブースト、その正体ってワケ。

 なのでカクヨムで「作品を完結させる」というのは、少なくともポイント獲得の観点では効果が薄い、というのが私の結論となる。

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