20221020ワークショップ①砂連尾
開催日時:2022年10月22日 13:00~14:30
場所:グレイスヴィルまいづる-東京(Zoomオンライン)
内容:
2人の参加者とそれぞれ砂連尾さんが1対1でワーク。対話、動き。
1.KTさんと1対1で20分程度
2.Aさんと1対1で20分程度
***
砂連尾理(ダンサー・振付師)
ここ数回ご一緒しているKTさんとのワークがこの日もありました。耳が遠いKTさんとは、今回も生きがい支援員の浦岡さんが私とKTさんの間に入って、私の言葉をホワイトボードに書いてはKTさんに届けながらのワークでした。
冒頭、浦岡さんは私のことをホワイトボードに書いて説明しています。
ここからほんの少し一緒にストレッチ的な動きが出来たのですが、この日のKTさんは動くことにあまり集中されず、いきなり次のような会話が展開していきます。
浦岡さんは“後で、スタッフに確認します”とホワイトボードに書き込みます。それをみたKTさんは両手を合わせたポーズになりました。
この間、浦岡さんは他の入居者と会話。KTさんは画面をみずに、浦岡さんのやり取りを笑顔で追っています。
ずっとKTさんは私の言葉が書かれたホワイトボードを見て会話されているので、タイムラグが生まれています。
KTさんがお辞儀されると、私もその身振りつられてお辞儀を返してしまいます。
KTさんと私は手を合わせてお辞儀。
KTさん両手合わせてお辞儀。それにつられて私もお辞儀。
やっと、浦岡さんが私の「KTさんが、今、一番欲しいものは?」という質問をホワイトボードに書き終わり、KTさんが読むことができました。
ホワイトボードに書き込まれる文字をじっと長い間眺めるKTさん。
***
KTさんとの会話はまだまだ続くのですが、おおよそ上記のような流れで会話は進行しました。その時の模様をこうやって文字に書き起こしてみると、浦岡さんを含めた私たち3人の会話には、次のようなことが起こっていたように思います。
1、私が話す。→それを浦岡さんがホワイトボードに書いている。その間、両者に間には沈黙の時間。→書いてあることをKTさんが理解して話す。
2、私の話と浦岡さんのホワイトボードに書かれている言葉にタイムラグが生じ、現在進行形の話とは異なる返答がKTさんからなされる。
3、KTさんの「ある囚われ」が、私の話そうとすることとはズレた状態で展開していく。
1で起こった状態は、普段の健聴者との会話と比べると“話すー待つ”がセットになっているので、頭の回転で展開していく身体の状態とは異なります。そこに、時折、2のような状態が訪れるため、もう既に通り過ぎている過去の時間に私の身体は引き戻されます。
更に、この日にKTさんが囚われていた、または心配事だった3の“お金”にまつわる話が(それは、この日だけではなく、常に考えていることかもしれませんが)、この日の二人の中心的な話となっていきました。
私が別の話をしようとしてもそこに引き戻されて、さらに、不意に起こるKTさんのお辞儀の身振りも不定期に加わり、私の身体はKTさんの言動、行動にズラされ、振り回され続けます。1〜3で起こっていたことをもう少し短い言葉で表すと以下のような流れでしょうか。
アクセル→ブレーキ→過去への引き戻し→別の文脈への引きづられ
この日のKTさんとのワーク中、喋り方が何だか似ていたということがあったからでしょうか、私は志村けんのひとみ婆さんのコントを思い出していました。
ワーク後、コントを改めてみたのですが、この日のKTさんの身振り、言動を何となく想起させるなと思いました。ひとみ婆さんのモデルは実在していると記事で読んだことがありますが、この方もKTさんのような人だったのでしょうか?
それにしても、とつとつダンスワークショップにご参加くださる多くの入居者とのワークを通して、私は彼らからダンスや演技における表現とは何か、また脱構築された身体とは何かということを考える機会をたくさん貰っているなとつくづく思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?