一句鑑賞 スカートに鏡ちりばめ冬の園/岡田由季
「好きな俳句の一句鑑賞 Advent Calendar 2024」という、五月ふみさんの素敵な企画の最後の一枠に滑り込みで参加させて頂けることになった。
どの句にしようかなぁと、手持ちの句集を見ていたところ、付箋が貼ってあった句が目に留まった。私のタイムラインには俳句好き以外に、ファッション好きの女性(自問自答ガールズ)が多いので、ぴったりだと思った、この一句。
スカートに鏡ちりばめ冬の園/岡田由季
割った鏡の破片を浴びてしまった景ではない。小さなミラーパーツ(鏡のスパンコールみたいなもの)を散りばめるように縫い付けられたデザインのスカートを詠んでいるのだと思う。目に浮かぶのは、黒やグレー、カーキなど少し地味な色合いの、大人向けのチュールロングスカートだ。
一応補足すると、チュールとはバレエのチュチュなどに使われるネット状の生地で、ここ数年はスカートはもちろん、ワンピースやブラウスなどでもよく見かける人気の素材だ。本来は絹のようだが、服として一般に流通しているのはナイロンやポリエステルのものが多いと思う。透ける素材なので数枚重ねられていることが多い。
その、ボリュームのあるチュールの少しカサカサ、ゴソゴソとした感触が、季語の「冬の園」と響き合う。時間帯は朝。淡い朝日の下で庭園の枯草に下りた霜が光っている。その輝きは、控えめだけど美しい。角度によっては強く光るその姿は、ミラーパーツの光と似ている。庭園には凍った池もあるかもしれない。青空の下で、真冬の地味な色彩の庭が美しさを見せる。たとえ家の中に居ても、町の中にいても、冬の空気がスカートを冬の園にしてくれる。
輝きを添えるパーツが付いているチュールスカートは、少しフォーマル感があるアイテム。普段用ではなく、ちょっとしたお出かけや、パーティー用の可能性もある。ハレの日に「冬の園」を華やぎとして纏うのは、とても粋だと思う。
出展:
句集『中くらゐの町』岡田由季(ふらんす堂 )
余談ですが、元TBSアナウンサーの堀井美香さんが「母」朗読会で着られていたスカートがまさにイメージ通りでした。こちらの写真のものです。
五月ふみさんの「好きな俳句の一句鑑賞 Advent Calendar 2024」企画で書かせていただきました。ありがとうございました!25日まで、みなさんの鑑賞を読ませていただくのを楽しみにしています。