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言い合いとは、なんなのか。


今の通勤経路では、小学生によく会う。
会話がなんだか面白いので、つい聞いてしまう。

例えばこれ。

少女A「私さ。めっちゃ優しいねん。
なんでかって言うとな、お母さんも優しいからやねん。
子どもって、親に似るって言うやん?」
少女B「うん...」
少女A「.........」

なんかAちゃんも気まずくなってる。
いや、素敵だよ、自分の素敵なところに気づいてさ、
友だちに伝えたいって思ったんだよね。
でも、思った反応じゃなかったからさ、
「あれ、話ミスった...?」ってなったんかな。
Bちゃんも、そう言うしかないよな。


もちろんこんな平和な会話だけでなく
言い合いにも遭遇するわけで、
この場面について(勝手に)すごく考えさせられたので
記録しておこうと思う。

登場人物は
少年1(げんき)、少年2(たけし)、少女1(ともみ)の3人。
名前は今適当に出てきた名前。

ーー物語は、チカチカした青信号から始まる。


青信号「チカチカチカチカ」
げんき「今なら斜めダッシュで間に合う!」
たけし「おい!チカチカは戻らなあかんねんで!」
ともみ「大丈夫やって!」

げんきが走る。
続いて、ともみも走る。
横断歩道を斜めに渡る。

たけし「おいあかんって!」

信号が赤になる。
げんき&ともみは息を切らして、
渡った先でたけしを待っている。

たけし「はぁ!?お前らほんまくそやな!」

車びゅーーーん

げんき「え?なんて?」


たけし「お前ら、ほんま、くそや!!!
あほか!ぼけ!習ったやろ!!!」

車びゅんびゅーん

ともみ「なんか言ってるで」
げんき「なんてー!?」


たけし「もーええわ!絶対先生言うからな!」

車びゅーーーん

げんき「えーー??もう一回言ってー!」



たけし「お前ら、くそやって言うてるねん!」

げんき「お前の、クソが、良い...!?おれ!?」

ともみ「(笑)」

たけし「(笑)」

私「(笑)」



信号が青になり、たけしが走って渡る。
たけし「おい習ったやんけ〜」
げんき&ともみ「でも行けたよな!」
一同「hahahaha」

先ほど"先生に言う"と怒っていたたけしも
もう笑っている。
げんきも俺のクソのことはもう忘れている様子。


そして彼らは校門へ入っていき、物語は終わる。



いやー可愛い言い合いやなぁ、と思いながら、
こちらも学校(勤務地)へと向かう。



ふと思う。
「果たして言い合っていたのか」と。

そう。車の音によりたけしの発言を
勘違いしたげんきのファインプレーにより、
これは言い合いではなくなっていた。

たしかに、げんきとともみの行動は
交通ルールとして良い行いとは言えない。
たけしの注意ももっともである。
学校で習ったことを遵守する、児童の鑑でもある。
ただし、たけしの言葉選びにも少し問題がある。
教員として、どちらに話をすべきか、思いを馳せる私。
まぁこの場合どちらもかなあ。


さて、小学生の「先生に言う」は、
かなり緊張感の走るものである。
我々で言う「管理職に報告させていただきます」と同意である。


それを聞き間違いでやり過ごしたげんき。


しかし考えてみてほしい。
果たして本当に聞き間違いだったのだろうか、と。


一緒に登校する仲ということは
それなりの仲の良さはあるだろう。
「習ったやろ」という発言から、
おそらく同じ学年であろうことも見て取れる。

きっとたけしの言葉遣いについて、
げんきは知っているはず。

何より、
たけしとほぼ同じ声量のげんきの声だけでなく
ともみの「なんか言ってるで」という
呟きまで、こちらには聞こえている。

げんきは、あえて、聞こえないフリをした...?

平和のために...?




とかしょうもないことを考えながら通勤する日々。

たけしでもげんきでもともみでもない彼ら、
車に轢かれないように気をつけて登校してね。


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