#117 人はなぜ悲劇を求めるのか
『鬼滅の刃』が大ヒットして久しいですが、昨年2020年はコロナ禍の巣ごもり消費の影響もあり、漫画の販売金額が過去最高額になったとニュースで見ました。その額6126億円!『週刊少年ジャンプ』が653万部という発行部数を記録した1995年のピークを上回る総販売額とのこと。
ジャンプ漫画といえば、ポスト『鬼滅の刃』との呼び声高い『呪術廻戦』や、ちょっと前に第一部が完結した『チェンソーマン』など、私も結構読んでますが、この3作に共通して言えることが、「結構メンタルやられる悲劇が起きる」ということ。先ごろ最終回を迎えた『進撃の巨人』なんかもそうなのですが、読んでいてあまりの衝撃的な展開に読み終わった後、ボーッとショックを受けて動けなくなることもしばしばです。
しかし読むのをやめることができない。
読むと楽しいよりも辛くなる内容のものを、思わず読んでしまうということがないですか?漫画に限らず、小説、映画、演劇などのいわゆる「悲劇」と言われているもの。
悲劇というとシェークスピアなんかが思い浮かびますが、基本的にオペラは悲劇が多いですよね。悲しいよりは楽しいものを視聴した方がいいようにも思うのですが、なぜ人は悲劇を好んで鑑賞するのでしょうか。
調べると古代ギリシャまで遡りました。
アリストテレスの『カタルシス論』です。
それによると、人間がすすんで悲劇を見ることは「カタルシス」を求めていて、心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情から解放されようと試みているということらしいです。
よく分からなかったので、さらに自分でも色々と考えてみました。「カタルシス」とは一般的に「浄化」と訳されますが、元々の語源は「排泄」という意味でした。
人は自分の体から何かを排出する時、いずれも快感を伴います。それは体から悪いものを出すためだったり、種を保存するためだったりするわけですが、ひとつだけ説明が難しいものがあります。
それが涙です。
目の渇きを潤す、目に入ったゴミを流し出すためとも言えますが、悲しみや喜びの感情からくる涙は、なぜ目から流れてくるのでしょうか。
こういう場合、泣いた後は得てしてスッキリすることが多いですよね。悲しいと涙が出るのは、心を浄化するためなのかもしれません。体ではなく心の悪いものを排出する行為というイメージ。
悲劇を見ることが心の浄化になるというのはあまりピンとこないのですが、涙を流すと心が浄化されるという考えは、私的には結構腑に落ちました。
泣くとスッキリすると感じる方は、動画サイトで「東京ガス CM」で検索してみてください。歴代の東京ガスのCMはどれも泣けるものばかりでオススメです。私もたまに検索します。もしかしたらCMを見る視聴者に「カタルシス」を起こすことを狙っているのかもしれません。
「鬼滅の刃」のヒットの要因も、いたるところで議論されていましたが、世の中の情勢によるところもやはり大きいのかもしれません。このコロナ禍で心の澱が溜まった人々の心の浄化をする役目を負っていたのかも?
まだまだコロナ禍は続きそうです。ユーザーの心の浄化を図れるような商品、サービスを開発したいものです。
追記:漫画ネタとして、先日放送されたアメトーークの「マンガ大好き芸人」回を見て、私もフリップを用意したい!と思ったので作ってみました。やはり書き切れない!