#215 「界隈」を知り、伊能忠敬の偉大さを知る

最近「〇〇界隈」という言葉をよく見かけますねー。昨年2024年「新語・流行語大賞」の候補30語の中にも、「界隈」という言葉がノミネートされていました。近年、日本では「界隈」という言葉が特定のジャンルや趣味を共有する人々のコミュニティを指す言葉として広まりを見せてますよね。

この言葉の背景には、SNSを中心としたデジタルプラットフォームの普及が大きく影響しています。そう、「#(ハッシュタグ)」です。「＃」は特定の話題や興味関心を整理して、同じ趣味を持つ人々が自然と集まる場を生み出します。その結果、それぞれの「界隈」が形成され、従来のマスメディアとは異なる形で情報が共有されるようになりました。

この「界隈」という言葉が流行していることを知った時に私がまず思いついたのは、やはり『マツコの知らない世界』です。ご意見番であるマツコが知らない「世界＝界隈」を紹介してきたこのTV番組は、このような社会の変化と深く関係していると言えるのではないでしょうか。それを考えると番組を作ったスタッフは、かなり早い段階からこの世相を読んでいたのかもしれません。同番組では、特定の趣味や興味を持つゲストが、自らの熱量でその世界を語りますよね。このスタイルは、視聴者に「自分の知らなかった興味深い世界」を発見させるだけでなく、「こんなに深く愛されているものがあるんだ」という驚きや共感を与えてくれます。結果として、その「世界＝界隈」の魅力がより多くの人に伝わり、新しいファンを獲得するきっかけとなっているのではないでしょうか。

「界隈」という言葉が示すように、日本のマーケティングは今、より個人化・分散化された時代に突入しています。特定の分野に情熱を注ぐ人々が声を上げることで、これまで見過ごされてきた価値が新たに発見され、社会に受け入れられるようになりました。この流れは、SNSの発展と共にさらに加速していくでしょう。そして、それぞれの「界隈」が持つエネルギーを尊重し、適切に活用することで、企業やブランドはより深い共感を生み出すことができそうです。実際に界隈マーケティング支援サービスを生業としている企業も登場し始めています。

さて、世の中にはどんな「〇〇界隈」があるでしょうか。最近話題の「風呂キャンセル界隈」や「自然界隈」、「回転界隈」などが挙げられますが、中でも私が特に興味深いと思うのが「伊能忠敬界隈」です。この言葉は、伊能忠敬が日本全国を測量し正確な地図を作り上げた偉業にちなみ、長距離を歩くことを好む人々や、仕事や趣味で長時間歩く人々を指します。

ここで注目したいのは、「地図を作る、地図が好き」といった要素ではなく、「伊能忠敬＝たくさん歩いた人＝長時間歩くのが好きな人」という点に焦点が当てられているところです。このシンプルな連想が「伊能忠敬界隈」という言葉をユニークで面白いものにしています。

そこで次の段階として、伊能忠敬以外でこのような「〇〇界隈」の概念を当てはめられる偉人はいないか考えてみたのですが…。

全然いない！！

「〇〇界隈」に当てはまる条件を書き出してみます。

• たった一つの偉業に生涯を賭けている

• 達成した偉業以外に、その工程で延々と行われる単純作業が必要

• 日本国民なら誰でも名前を聞けば、なんとなく何をした人かわかる

• その人以外に当てはまる人が、他に見当たらない

などが挙げられるでしょうか。これに当てはまる人はなかなかいません。でもそこは何とか無理やり二人絞りだしてみました。

1. 高倉健界隈

高倉健はその渋い演技と誠実な人柄で、日本映画の歴史に燦然と名を残された名優です。その彼の「自分、不器用ですから」という名台詞に着目。ここで言う「不器用」とは、「生き方が不器用」っていう意味だと思います。でもあえてそこではなく、「手先が不器用な人たち＝高倉健界隈」と言うことはできないでしょうか（健さんに失礼だろうか）。この界隈では、手先が不器用な故の失敗談や、逆にその丁寧な仕事ぶりを共有し、励まし合う温かいコミュニティが形成されそうです。

2. さかなくん界隈

さかなくんは魚類学者であり、タレントとしても知られる人物です。その昔TV番組『TVチャンピオン』に学ラン姿で参加していた雄姿を思い出します。その豊富な魚知識と明るいキャラクターは、魚好きや海洋生物愛好家を魅了していますよね。魚に関する情報を交換したり、海洋環境保護について議論したりする人々の集まりを「さかなくん界隈」と言えないでしょうか。この界隈では、さかなクン流のユニークな視点や楽しさが重要視され、魚料理レシピや水族館巡りの情報も飛び交いそうです。

二人挙げてみましたがやはり無理がありますね。結局「○○界隈」に〇〇にドンピシャで当てはまる偉人は伊能忠敬しか思いつきませんでした。そんなことから、生涯をかけて一つのことに取り組んだ伊能忠敬はやっぱりすごい！と再認識させられました。伊能忠敬以外で「〇〇界隈」に合う偉人がいないか、皆さんも考えてみてください。

追記：全然関係ないですが過去に『マツコの知らない世界』のこと書いていたのでリンク置いておきます。