1巻こばなし#01「鉄鍋のジャン」
このnoteでは
色んなマンガの単行本1巻だけの感想を書いていく。
すでに連載終了した作品でも、まだ1巻しかでていない作品でも1巻は誰にでもやってくる。
「このマンガは3巻から面白くなっていくんだよね」「最終巻まで一気に読むといいよ」
そんなことはご存じない。だって、ボクらはいつだって1巻から読み始めるんだから
※有料になっていますが、全文読めます。よかったら投げ銭くれると嬉しいです。
マンガには多くのジャンルがある。
スポーツ、バトル、恋愛、日常……などなど。
その中でも実は料理マンガというジャンルは、意外と昔からあるメジャーなジャンルだったりする。
では面白い料理漫画は何かと聞かれると様々な作品が飛び交うことだろうが、私の一番は「鉄鍋のジャン」だ。
そして、鉄鍋のジャンは自分が最も好きな作品でもある。
一番好きな作品は? と聞かれてたら悩まずに答えられるほどだ。2位以降はその時の気分とかでまちまちだが、ジャンだけはどんな時もぶっちぎりの1位だ。
主人公、秋山醤(以降は作品内のでの呼ばれ方通り「ジャン」と記載)は「中華の覇王」と呼ばれていた料理人の孫で、幼少期の徹底した教育により、本人も凄腕の料理人だ。「料理は勝負」を信念に持つ彼は、勝つことが全てでそのためならどんな手もいとわない。
さてはて、鉄鍋のジャンといえば知る人ぞ知る料理漫画の傑作である。度々話題にあがったりあがらなかったりするし、何よりも他の料理漫画とは明らかに異質なものだろう。
なんたって、主人公が悪者だからだ。
そんな鉄鍋のジャン第1巻は彼が、東京銀座の日本一の中華料理店「五番町飯店」にやってくるところから始まる。
閉店間際に彼が注文したのは「炒飯」。五番町飯店のコック望月が作るもののそれを一口食べたジャンは厨房に上がり込み、炒飯を大批判。挙げ句の果てに「これって料理?」と捨てた。
一応言っておくが彼が主人公だ。
その後、五番町霧子というオーナーの孫とすったもんだありながら、第1巻後半では若手中華料理のナンバーワンを決める中華料理人選手権に出場。
予選のスープ対決と1,2回戦までが描かれる。
まあ、その勝ち方も酷いモノで……。
予選はマジックマッシュルームのスープで審査員達を中毒にさせて高得点を奪い予選突破。
そのあまりにも極悪非道な勝ち方で瞬く間にヒールとなった。(霧子にも「料理じゃない!」と殴られる始末)
そんなジャンだが。とにかく料理の腕前は天下一品だ。
鉄鍋のジャン第1巻はそれを読むことでジャンの腕前から悪行。料理に対する考え方その他諸々。
主人公のパーソナルがある程度把握できるようになっている。
最近の漫画は長期連載が進むにつれて後付けなのか伏線なのかわからない設定がくっついてくるが、ジャンという漫画はそれがあまりないように思う。
少し前の漫画特有の「さらにつよいあいつよりもつよいあいつ」みたいなのはでてくるが……それはまあ先の話。
ここは第1巻だけを語るブログなので
鉄鍋のジャンは絵のタッチが割と昔的というか少々癖があるので、人によっては合う合わないがあるかもしれないが、飯の描写が最高に美味しそうなのだ。
綺麗な絵による綺麗なご飯ではなく、アバウトな感じだが、「あー確かにありそう」と感じられる絵。
これがリアリティを増している気がする。中華料理ということもあり絵が生み出すうまさのパワーは十分感じられるはずだ。
第1巻第1話で霧子が作った「黄金炒飯」も、ジャンが作った「干し貝柱のダシが染みこんだ豆腐の海鮮風炒飯」もぱっと見の絵的には、同じように見えるけど、料理漫画特有の食べている人達の語彙力満載の感想描写によって味がわかるのだ。
とはいえそんな傍若無人なジャンの信念が許せないのが、五番町霧子だ。彼女は五番町飯店のオーナー「中華大帝」の異名を持つ祖父、五番町睦十の孫だ。
彼女は食べる人のことを第一に考えた料理を作ることを大切にしている「料理は心」を信条にしている。
そのため、「料理は勝負」と言うジャンとは度々というか毎回衝突をしている。
私はそんなジャンという作品が大好きなのだ。
傍若無人に振る舞い、回りを敵だらけにして勝手に追い込まれていくのにそれらを全て圧倒的な料理の力でねじ伏せる。
きれい事な主人公ムーブを無視した完全なヒール。ダークーヒーローとはまさに彼のことを呼ぶのだろう。
最近の少年漫画では中々お目にかかれないだろうジャンのようなキャラは、今改めて読むと新鮮に映るはずだ。
そもそもジャンに出会ったのは偶然だった。
確かリアルタイムではジャンの連載は読んでいなかったはず。高校生の1~2年あたりで続編にあたるRの連載だったような気がする……。
それぐらい当時はそんなにおも入れはなかった。
それがどういう理由で出会ったのかというと、作品名だけがやけに鮮明に覚えていたのだ。
「鉄鍋のジャン」という名前がだ。別にこれ自体はなんてことはなかったのだが、不思議と覚えていた。
そして、大学生になったぐらいでコンビニに売っていた総集編的なアレを手にして初めて、ジャンを読んだのだ。
確か、巻末にあったレシピも気になったはず。当時の私はひとり暮らしをしており、自炊がちょっとしたブームだったからだ。
それでみた炒飯の作り方をまねて見たり……ああ、書いていて思い出した。米を炊く際にちょっと油を入れることで、炒飯用の飯としていい感じになるというのをジャンのそれで知ったのだった。
油が米をコーティングすることで、中華料理屋で食べるようなパラパラの炒飯になると。
まあ、実際にはそんなことはなく普通のべちゃっとした炒飯になったのだが(これも後々に「火力不足」だったり、そもそもコンロが小さかったりというのがわかる。これもジャンのおかげだ)……。
ただ、おかげさまで中華料理というジャンルは、他料理よりも思入れが深いジャンルとなった。
とはいえ辛いモノが苦手なので麻婆豆腐よりも自分は回鍋肉や青椒肉絲とかの方が好きだが。
私は作品やモノなどに割と影響を受けやすいタイプだと思ってる。
ジャンの影響で中華料理が好きになったし、父親が昔スズキカプチーノに乗っていたので喫茶店ではカプチーノを頼む。まどろみバーメイドの影響でカクテルも飲んでみたり――。
閑話休題
その後、電子書籍版でKindleにて鉄鍋のジャンの文庫版の電子版(ややこしい)を購入。
そして、ようやく好きな漫画を手元におくことができたのだった。
今では読む漫画何かないかなーと悩んだらとりあえず、ジャンを手にしている。
さて、そんな鉄鍋のジャンで忘れてはいけないのがどこか憎めない敵?役「神の舌を持つ男」大谷日堂だ。
ジャンや霧子よりも遙かに年上のおっさんなのだが、神の舌の通り、料理を一口しただけ(時には食べずに匂いを嗅いだだけ)で、その料理に使っている材料や味付け、調味料の種類など全てを当ててしまい、料理人の鼻を折るわかりやすい悪役だ。
悪役といっても、同じように悪者ムーブをするジャンもいるのでどっちもどっちだが。
彼はその舌を持って日本の中華料理界に大きな影響力を持っており、作品通じて最後まで審査員としてジャン達料理人に立ちはだかる。
そんな彼も第1巻にもちろん登場。
接待で五番町飯店にやってきた大谷に対して、本来なら料理を作るはずの総料理長が熱で倒れ、代わりにジャンと霧子が料理を出すことに。
いつも通りに味を暴いて、料理人に恥をかかせようとするのだが……。続きは是非とも読んでほしい。
そして、後半は上述していた、若手中華料理のナンバーワンを決める中華料理人選手権が始まる。
ここの審査員長が大谷だ。
色々な手を使ってジャン(というよりも全ての料理人)をこき下ろそうとする。
そしてここから本格的に料理勝負の物語が始まる。
当然ながら、主人公がジャンなので一筋縄ではいかず……。そこで始めたのが予選のマジックマッシュルームのスープだ。
最後に
「鉄鍋のジャン」というマンガは今でも熱狂的ファンがいるマンガの1つだろう。
そして同時にチャンピオンで連載されていたというのもあり、どちらかというとマイナーよりのマンガだろう。
中華料理マンガも、「中華一番!」が真っ先にでてくるかもしれない。
それでもこのマンガが持つ一番の魅力は、主人公秋山醤の素行とそこから生み出される最高の料理。これにつきるだろう。
ストーリーもわかりやすく、サクサクと読める傑作だと思っている。
まずは第1巻を手に取ってジャンの中華の真髄を見て欲しい。
好きな第1巻エピソードは「中華の真髄」
悪役的な動きだけじゃない料理人としてのジャンを知ることができるだろう
余談
鉄鍋のジャンといえば料理対決によくある「先攻は負けフラグ」を見事にへし折ったマンガだろう。
といっても、勝ち方が「あえて後攻じゃないと勝てないような料理」を作ったのだが……。
もちろんジャンが。
今回紹介したマンガ