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「私たち、“ズッ友“でしょ?」




渡:....はぁ


楽屋から離れて、ライブ会場の外階段で1人ため息を吐く

みんなの前で卒業を発表して数ヶ月
ブログで公に発表してもう2ヶ月

それこそもうちょっとあるなーって思ってた卒業のリミットも、
気づけばもうすぐそこまで迫ってきていて、
最初は実感なんて無かったけど、いざすぐそこまで来てると思うと寂しい気持ちになる

色んな『最後』が積み重なっていく度その気持ちはどんどん大きく膨らんで
この先にある未来への「期待」よりも先の見えない「不安」が私の脳裏をチラついて寂しさと相まってより後ろ向きな気持ちになってしまう


渡:はぁ...やっぱり...


?:みーほっ


渡:うわあっ?!ってなんだ...菜緒かぁ〜


菜:なんだってなによ、なんだって

菜:どこ行ってもいないから探したよ


渡:いや〜、ちょっとびっくりしただけ...

渡:探してたって、何かあったの?


菜:いや、そんなことないけど〜


菜:ってかなんか暗いけど、どうしたの?


ウソ...そんなにわかりやすく出ちゃってたかな...


渡:そ、そんなことないけど...?


菜:絶対嘘だ〜


渡:ホントだって〜笑


すぐに笑顔を作って何もないかのように取り繕う


菜:よいしょっと...


渡:菜緒??


徐に隣へ腰掛ける菜緒
いつもなら楽屋で史帆さん、未来虹やひなのたまに愛萌の隣でくっついてることが多い
よく遊んだり、旅行にも行くことはあるけど、仕事とかの兼ね合いもあったりはするけど、楽屋とかだと私の隣に来ることはあまりない


菜:ん?何?


渡:いや、珍しいなぁと思って...


菜:なんや、ダメなん?


渡:そうじゃないけど...


菜:ならいいやーん


渡:うん...


少しお喋りをして、それが落ち着くと菜緒は私に抱きついてくる
その力はいつもよりちょっと強い感じがした


渡:ちょっ...菜緒...


菜:んー?


渡:ちょっと...強くない?


菜:そんな事ないよ?


そう言うと体重の殆どを私に預けてくる


菜:いつでも手でも胸でも貸してくれんねやろ?

菜:今は美穂とくっつきたいの

菜:だから身体貸して


渡:....うん。


菜緒に包まれる
菜緒の匂いが強くする
優しくて、あったかい...
その匂いが鼻をくすぐる度に私は少し泣きそうになる
必死に堪えながら上を向く


少しでも下を向いてしまえば涙が目から落ちてしまいそうだから


菜:ねぇ、美穂さんや


抱きついてる彼女が尋ねる


渡:ん?...なに?


菜:やっぱりなんか隠してるやろ?


渡:....


菜:何?言えないことなの?


渡:...そうじゃ...ないけど...言ったら心配させちゃうから...


菜:菜緒にも言えない?


渡:それは...


菜:そっかそっか、じゃあいい

菜:美穂が話したくなったら話してよ


渡:...う、うん。


そしてしばらく無言が続く


菜:ね。


沈黙を破ったのはまたしても菜緒だった


渡:...どうしたの


菜:なんかさ、楽しい話しようよ


渡:楽しい話って何があるの...


菜:んー、じゃあ思い出話とか


渡:思い出?


菜:うん


そう言うと菜緒は顔を背中から肩に移し顎を乗せて話し始める


菜:いっちばん最初に仲良くなったのは美穂だったなぁ


渡:...ブログにも書いてたね


菜:あの時、菜緒めっちゃ嬉しかってんよ?


渡:そうなの?


菜:うん、あの頃は現場でもみんなの前でもずーっと緊張してた笑

菜:でも、あの時美穂が声、かけてくれたから今もこうしてみんなと一緒にいられるんだと思う


渡:そっか...


菜:でー、次は〜やっぱりドラマかな?


渡:DASADAの時は楽しかったよね〜


菜:毎日一緒にいたね


渡:あのドラマで菜緒ともっと仲良くなった気がする


菜:そうだね〜


渡:その後2人で旅行にまで行ったもんね


菜:大阪な〜、本当は行きたいところいっぱいあったんだけどなー


渡:じゃあまた行こうよ


菜:そうだね


菜:あ!後あれも面白かった


渡:?


菜:美穂のスカートビッリビリになったあの事件笑


渡:あれは...もう言わないで...


菜:流石にあの時はびっくりしすぎてもうおかしくておかしくって笑笑


渡:むぅ!笑うなー!


ムニッ!


菜:うゆゆゆっっ...にゃにしゅんねん!


渡:笑ったお返しだー!


ムニュムニュムニュムニュ


菜:やーめーろーーー


しばらくじゃれあい...


渡:はー、スッキリした


菜:ほっぺ痛い....


渡:あ、私、今年の誕生日菜緒が来てくれたのはびっくりした


菜:なんで?


渡:だって来るって思ってなかったもん


菜:そりゃ行くでしょ

菜:菜緒の大切な人の誕生日だもん


渡:菜緒...


菜:色んな事...いっぱいあったね〜


渡:...そうだね


菜:もう美穂が卒業って早いなぁ...


渡:うん...


不意に出た「卒業」の二文字
その言葉に忘れかけていた不安と寂しさが込み上げてきて
お腹に巻かれた菜緒の手を少しだけ握り締めた

菜:美穂?


渡:菜緒....あのね...


菜:うん


渡:私、やっぱり、不安...


菜:...


渡:日向坂から卒業して、これから1人で色々やっていくのが、怖いの...

渡:はじめはさ、それこそ期待とか前向きな気持ちだったけどさ...

渡:でも、卒業が近づいてきて、「大丈夫かな」とか「うまくやれるかな」とかそういう不安ばっかり出てきて

渡:最近ずっと悩んでるの...


菜:そっか...


渡:うん...


菜:美穂


渡:なに?


菜:菜緒は、美穂なら大丈夫だと思う

菜:美穂は入った時からすごいストイックで

菜:すごい頑張り屋だったし

菜:それにみんなから愛されてる

菜:だから、大丈夫だよ


渡:うん...



渡:ねぇ、菜緒?


菜:ん?何?


渡:私たち卒業しても...


菜:そうだよ


渡:へ?


菜:どうせ卒業しても、ちょっと離れてもずっと友達だよね?

菜:そう言うつもりだったんでしょ?

表情は何一つ変えず
ただ真っ直ぐを見て
隣にいる戦友が問う


渡:う...


菜:何年一緒にいると思ってん


渡:それは...


菜:はぁ、ほんまに、美穂はわかってないなぁ


渡:へ...?


菜:あんな?美穂が菜緒のことどう思ってるのかなんてわからないけど

菜:少なくとも菜緒はな、

菜:楽しい時も苦しい時も悲しい時も

菜:いつだって一緒に乗り越えてきた仲間で

菜:寂しいって言ったら何も聞かんでそばにいてくれて

菜:嬉しい事あったらすぐに言いたくて

菜:バカやりたいなって思ったら一緒にできる

菜:そういう友達やーって思ってる

菜:そりゃ、寂しいよ。私だって

菜:でも、そんなんでうちらの絆は失くなるもんじゃないやろ?


菜:だって私たち




「ズッ友だって、言ったじゃん。」



渡:!!


そうだ、そうだった
何弱気になってるんだよ
私には菜緒を含め沢山の仲間がいて
何かあったらそばにいてくれる友達がいる
弱音なんて言ってるんじゃない
自分で決めたじゃないか


渡:そうだね...そうだよね


菜:まぁ菜緒も美穂の...


?:あ!いたー!


2人で声のした方を向くとそこには好花と鈴花がいた


松:2人で何してるのー!


富:探したよー


渡:あ、いや...そのー...


菜:ちょっと2人でイチャイチャしとったんよ笑


渡:ちょっと!菜緒?!


松:あー、羨ましい!


富:私たちも混ぜてよー!


?:おーい菜緒〜ってこのちゃんと鈴花と美穂もいるじゃん


菜:おー美玖〜、どうしたん?


金:もうそろそろリハの続きやるんだってさー


松:え〜、今から美穂と菜緒とイチャイチャするつもりだったのにー


金:え?!そうなの?


美:ま、まぁ苦笑


金:私もみんなとイチャイチャしたかった〜


菜:まぁまぁ、後でたくさんわちゃわちゃしたらいいじゃん


富:そうだね〜


菜:じゃあ、リハ戻ろっか


4人:うん!


そう言って会場に戻る4人
中心には美穂がいて、それを富田や好花、美玖が囲んでる
菜緒はそれを1人見つめていた


菜:(美穂、言わなかったけど、菜緒がここに戻って来れたのは美穂のおかげでもあるんだよ)

菜:(菜緒が体調おかしくなって休んだ時たくさん連絡してきたり、たまに遊びに連れていってくれたり)

菜:(弱気になってたら何も言わずにそばにいて、「いつでも戻っておいで」って言ってくれたから、私は今ここにいる)

菜:(だから、次は菜緒の番)

菜:(美穂が笑って日向坂から卒業できるよう、頑張るから)


渡:菜緒〜?置いてくよー


菜:あ、ちょっと待って〜


先ほどまで日陰になっていた2人がいた場所には陽が射していた

曇っていた空はいつの間にか雲一つない晴れ空

その淡い青色のキャンバスには

一筋の白い飛行機雲が浮かんでいた









渡:ねぇ菜緒?


菜:ん?


渡:「なおみほ」は永遠だから!



菜:ふふっ、そんなん当たり前や!




fin

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