姉妹の終活
"姉妹"に限らず、昔は、兄弟が多いほど
助け合い、支え合いが出来ると言われていました。
お一人様の"終活"が増え始めてから
その様子は、変わってきた様です。
仲のいい6人兄妹がいました。
1番上の兄が他界した頃から
女ばかりが5人残ったせいか、口うるさい長女と
他の4人に分かれて付き合いが続いていました。
面倒見のいい長女を除いて
残った3人の話題は、もっぱら4女の話。
姉妹の中で、たった1人だけ未婚のため
口に出しては言いませんが
『老後どうする気?』
『寝たっきりになったら、誰が面倒見るのよ?』と
みんなの頭痛の種だった。
その頃、両親が所有していた
マンションを売り、全員で売れたお金を分けることに。
1人あたり数百万円ずつ
2女が言いました。
『自分達の取り分少し減らしてでもいいから
4女にあげて。』
長女はそんな姉妹の姿を見て
『みんな4女の事を考えてくれてるんだ・・・』と喜んでいましたが
2女・3女・5女が出して来た紙きれを見て驚いた。
その紙には、こう書かれていました。
【財産を4女に多めに渡す代わりに
今後困った事があっても一切
姉妹を頼って来ない事を約束すること】
弁護士に依頼した訳でも無いので
覚書程度の内容でしたが
長女の中では、驚きと落胆するには
十分な内容でした。
『あんた達、姉妹でしょ?
母も言ってたじゃない?
何かあったら助け合ってやっていくことって。
どうして、こんな考え方になるのよっ!?』
長女の話に、真っ先に反応したのは
長女の次に口うるさい2女でした。
『ねぇさん、もうそんな時代ではないのよ。
助けてあげたいのは、やまやまだけど
結婚を選ばなかったのは、4女が選んだ人生でしょ?
それを今になって、年老いましたから、助けてねでは
通らないわよ。』
そんな姉妹のやり取りを横で聞いていた4女は
涙1つ見せず、こう言った。
『私は、みんなの意見に賛成かな。
私は、確かに結婚もせずに、1人で気ままに
生きて来た様に思われるかもだけど
寝たきりの母を最後まで見たのは
私だから。その分、多めにもらうわよ。』
4女が話した事で、結果、長女を除いて
残りの姉妹の取り分を減らし、4女に渡る事となった。
それから数年後、誰もが予想していた通り
姉妹の中で誰よりも早く身体を壊したのは4女だった。
そして、そんな4女の傍には
長女だけが残っていた。
長女は"姉妹の面倒は最後まで自分が看る事"と言う
考えの持ち主だった。
本来なら、4女の状態からすると
持っているお金で、そういった施設に入所する事も可能だったが
4女はその生活をなぜか選ばず
動かなくなった右足を引きずりながら生活をしていた。
4女の知り合いが、2人の会話を偶然耳にした。
長女『心配しなくてもいいから。私がいる限り
あなたの面倒は私が看るから。
施設なんて入らなくても、いいのよ。
私達は、仲がいい6人兄妹なんだから。』
4女『うん。私は、どこにも行かないよ。
ねぇさん。面倒かけて、ごめんね。』
知人は、こうも話していた。
『4女は足を引きずっているけど、身体以外
まだ、しっかりしてそうだけど・・・
大変なのは・・・むしろ・・・』
知人は、そこで言葉を飲み
黙りこんでしまった。
その知人が見た物は
長女の腰に巻きつけた紐の様な物を
自分の手首に巻き付け
長女の後ろを歩いている4女の姿だった。
長女の中では
いつまでも6人兄妹なのだろう。
せめて"思い出"だけは
仲のいい兄妹であってほしいものだ。
本日の"学び"
"結婚"も"離婚"も、人生のイベントは
ほとんどが、自分が選択するものなのだが
どちらも、なかなか自分が思った通りには
ならない事が多い。
自分のおかれている環境は、もちろんのこと
"親"であったり"兄弟"も少ながらず
その2つに影響が出る事がある。
そんな環境の中で"自分らしく"と言う
選択肢を選ぶ事は至難の業の様な気がしないでもないが・・・。
出来るだけ"後悔"や"失敗"と自分の中で
思ってしまう事だけは避けたいものだ。
人生は"やり直し"がきかないものなのだら。