双子の母の双子の話
あたしは双子。一卵性。
父は一生懸命働いてたけど、給料は安かったみたいやけど、しょうがないな。
今じゃもうないけど、生まれたばかりの時、うちの家族は、二階借りしていて、考えただけで大変やろなと、想像出来る。
だって、台所は一階に一つ。お風呂はない。
トイレも一つ。下の人が、大家さんってことは、その家族と、全てを共有やもん。
気を使ったんやろな。母さん。
お風呂は当然、銭湯へ行く事になる。
きっちり真面目な母は、毎日毎日同じ時間にお銭湯へ向かうねん。
近所の人が、銭湯へ向かう母を見て、あー、もうこんな時間!夕飯の用意せな!って言われるくらい、正確な時間に、判で押したように、きっちりと。
双子を毎日お風呂を1人で入れるのは大変。
そこは、銭湯のおばちゃんが、1人を見てくれてて、その間に1人を入れて、はい!って渡すとそのおばちゃんが、洋服を着せてくれて、また、もう一回、も1人を入れる。
自分を洗うの忘れてるくらい、のぼせてしまって、ちゃんと洗った事ないわーって、話してくれた。せやろなー。
そんな時
母と同い年の、24歳の人
何度も銭湯で、顔を合わせてた人
「毎日、大変やねー、もし私でよかったら、1人入れてあげようか?」
母は少し迷ったけど、一緒に、2人同時に入れれることが出来るので、頼んだとゆう。
いつも渡す子は、あたしやったらしく、
何故か?
それは、あたし(よしえでようちゃんって呼ばれてた)は、滅多に泣かない子やったからって、母から聞いた。
もし、どちらかが早かったら、今はないやろうけど、昔の銭湯にはあったんやろな、そこで待ってる事にして。
そこは、
銭湯の二階で、座敷になってたらしく、遊ばせる事が出来るようになってて、今はスーパー銭湯の、畳の部屋みたいなもんかな。
そこで、しばらく世間話して、お礼を言うて
バイバイする毎日やったらしい。
毎日同じ時間に仲のいい姉妹みたいに、2人で、双子をお風呂に入れることが日常になっていったみたい。
その内な、その人
「あのね、うちの主人も是非、ようちゃんに会いたいって言うてるねんけど、一度家に連れて帰ってもええかな?懐いてくれてるし。」
すっかり気を許してた母は、一度今夜主人に聞いてみるわ、って事になってんて。
父も一度やったらと、構わないということになって、了解したらしく。
それが、一度の筈が、2回になり、3回になり、ドンドン増えていった。アバウトやったのか?あたしの計り知れないことやった。
それが、一泊だったのが、またもや、二泊と、長くなっていって、一週間帰って来ない事もしょっちゅうになっていくねん。
子供のいないそのご夫婦はきっと嬉しかってんやろな。
覚えてないから、ひと事のようやけど、今そう思う。
流石双子やなと思う事があって、近所のお医者で、お互いに同じ時期に双子は熱を出して、
バッタリッ!てことが何度もあったらしい。
不思議やなーー!双子って。
せやけど、双子を1人で頑張ってた母は、1人預けるのは、ほんまに助かってんやろな。あたしでもそうしたいもん。わかるよ、母さん。しかも二階借りやもんな。
あたし自身が双子を育ててきたからわかるけど、一緒がやっぱりええよなぁ。って、今思う。
それが思わぬ障害になることも、経験してきたからかも知れん。
当然、預けられてる意識のない0歳児のあたしは、母より、その人に懐き、時折実家に連れて帰ってきたら、泣くようになる。
そりゃそうやろなー。
そこから、たまに実家に戻されるけど、ほぼそのご夫婦の家で育ってった。
そのうち、当たり前のように、父ちゃん、母ちゃんっ呼ぶようになり、本当に、ホンマの家族みたいになっていく。
みたいにやけど。
父ちゃんは、鐵工所をしてる社長やったから、金回りもよく、最新の玩具はすぐ買ってもらい、家の中にブランコを設置してもらったりもした。
父ちゃんは、仕事が終わると、着流しに着替えて、蛇革の雪駄姿。
母ちゃんは、社長より少し背が高く、普段は割烹着やけど、出かける時、着物にサングラス。
今思うと、なんか、すごいカップル。
物凄い亭主関白やった。
嫁はんにはボロクソゆう。
何度かゆうた。わ。
もっと優しく言うてや!母ちゃんかわいそうやん!って。
そう言うと、ニターって笑ってゴメン、って言う。
で、
一緒に食卓囲めへんし。
母ちゃんが料理作ったら、端から父ちゃんは食べていく。
待ってや!
待とうやと言うと、
冷めると旨ないと、必ず言うねんなーー!
母ちゃんも、食べ食べ!って。
なーんか、こうゆうのありやねんな。
冬にはフグを、タクシーでよく食べに連れてってもらい、どこか出かける時は必ずタクシー。
ドアツウドア、これがモットーらしい。
お陰で今も、魚の中でフグ1番好きやもん。
腹巻にワニ皮の財布にいっつも、万札ギッシリ入ってて、
口癖は
こうちゃるこうちゃる!
やったわ。(笑)
こうちゃるは、買ってあげるの方言なんです。
近くに東部市場があったから、大きな鯛を塩焼きだの、お刺身だの、贅沢三昧。
醤油だけだと飽きてきて、マヨネーズかけたり、やりたい放題、あたしの味覚もバグってるか?
魚ばっかりやったらと、今日はテキやで! テキとは、ビフテキの事(笑)。
今夜は映画行こかって、おんぶしてくれて、背中でキャッキャッ!ゆうて喜び、映画館へ行くんやけど、ほぼあたしは寝てたらしい。
でもそれしか知らんから、贅沢とは思わず、あれこれ好き嫌いもして、わがままな娘、ほんま、可愛ないなー。我ながら。
買って貰って当たり前、食べたいもんだけ食べてた。
こうやってあたしを甘やかすのが、楽しかってんやろな。好き放題させてもらって、これが当たり前の日常やったけど、
偉そうな言葉とか、わがままが過ぎると、父ちゃんから、やんわりと毎回言われたことがある。
よしえ!こうしてよしえが好き勝手言うたら、困る人いっぱいおるんやで、お前はそのままでええかも知れんけど、でもな、困る人の事、お前は考えていかなあかんで〜。って。
怒られてるのか?なんかわからんかったけど、人には優しくしよって、思ったん。
一度、朝起きるとだーれも居なくて、父ちゃんどこ行ったん?
3歳のあたしは父ちゃんを探しに家の横に流れてる川沿いをずっと歩いて、大きな踏切を渡って、『玉一』って名前の喫茶店へ行った。
でも父ちゃん、おれへんやん。どこへ行ったん?
いつも、父ちゃんと寝てたし。
その頃、父ちゃんちでは、大騒ぎになってて、あたしがおらん!って、従業員さんみんなで、川の中まで探して、警察にゆうた方がと、大変な事になってたらしい。
まさか、あの大きな踏切は、3歳では無理やろうと思ってたらしく、そこへ、その喫茶店のご主人から、電話で
「ようちゃん、1人で父ちゃんって、探しに来てるで!」
慌てて、父ちゃんが飛んできた。
そしたら、あたし
「お父ちゃん、どこ行ってたん!探しててんで!!もう!」
わがまま娘は口を尖らせて怒ったらしい。
父ちゃんは、よしえはよう寝てたから、起こさんかったって、言い訳(笑)
ここへは毎朝、手を繋いでモーニングに来てたから、置いていかれたと。。
この事、何故か薄ら覚えてるねん。
寂しかったからかな。おしゃまな娘やなぁ。
でも
時折帰される実家は実に居心地が悪く、そんなあたしに、父も母も、結構厳しかった。
わがままなあたしを一生懸命矯正してたんかな?
そんな夜はホームシックになって、父ちゃん母ちゃんに会いたいと、布団の中でシクシク泣いてたりもしてた。
双子の妹とは喧嘩はその頃はしないけど、遊んだ記憶もあまりないねん。何だろな。これ。
幼稚園へ通うことになって、本格的に実家で住むようになって、それはそれで幼いながら受け入れて、暮らしていくんやけど、密かに、父ちゃん母ちゃん、寂しがってるんちゃうかなとか、会いたいなーって、1人で、思ってた事を覚えてるねん。
でも前みたいに、父ちゃん、母ちゃんって呼べなくなっていった。
犬を多頭飼いしてた父ちゃんちだから、
いつのまにか、『わんわおっちゃん』
『わんわおばちゃん』
わんわんが、短くなってわんわ。
こう呼ぶと気が楽になる気がしたから。
小学校通うようになって、土曜日午前中で帰ってくると、ランドセル放り投げて、3キロ程あるわんわおっちゃんちへ、スタスタ歩いて泊まりに行った。
毎週行った。
そうしたら、わんわおっちゃんが必ずゆう。
「よしえ、よう道忘れへんかったな。」
そう言って、嬉しいそうに、ニコって笑う。
あたしもなーんも言わんと、ニコって笑う。
合言葉や!愛言葉か!
中学生になった時、一度だけ
わんわおっちゃんと、わんわおばちゃんが2人で実家にやってきて、一度だけ
あたしを養女に欲しいと頼んできたらしい。
らしいとゆうのは、あたしがいてない時やったから、その事は、大人になるまであたしは知らなかってん。
そんな大人の間で話が出てたんや、でも父は
断ったと聞いた。可愛がって貰ってきて、有難いけど、双子を離すことは出来ないからと。
そんなことは、全然知らなかった。
父も母も、わんわおっちゃんも
わんわおばちゃんも、言わなかった。
晩年、わんわおっちゃんも、わんわおばちゃんも、見送った。
病院も探して、ずっと側に寄り添えるだけ通った。仕事に行く前に車で病院へ送りに行って先生と話もして、でも力及ばずに、2人とも見送った。病院の手続きも、娘という事で、無事に出来たけど、後悔は残る。
大切な宝物が、居なくなった。
父も母も、見送った。
大切な4人
大切に育ててくれたことを、本当にありがとうって、心から感謝する。
4人から頂いたありったけの愛は、やっぱりあたしの根幹に、そして息子達に流れとるよーー!
普通は両親2人、でも、あたしには4人もいてた。
素敵な人生やなって、今もそう思う。
長い話し、読んでいただきありがとうございました😊
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