雨の東品川
ある秋の夜。
「俺、今からここ行くけど来る?」
TYハーバーのマップとともにLINEが入る。
「今、恵比寿にいるよ。充電なくなるかも。とりあえず行くね」
誰と一緒かも分からないまま、タクシーに乗って東品川に向かった。
「そこはね、有名だから。住所じゃなくてお店の名前言ってくれたらわかるのに」
白髪のドライバーは笑いながら私を送り出した。
雨をかぶった床がつるつる滑り、ピンヒールの脚は早く歩けなかった。
なんとなく胸騒ぎがする。
カウンタースペースの向こうに彼は誰といるのだろう。
黒ぶちメガネに白Tシャツに青のシャツ。
いつもと同じ格好だ。
テラス席に、5人の男女が居るのが見えた。彼は外の景色に背を向け、店に向かって座っていた。
後ろ姿の女の子が二人居るのがわかった。
女の子はそれぞれ男を連れていて、おそらくカップルだった。
”女の子”というのは、明らかに私よりも年下だとわかったからだ。
私を見つけて、彼は自分の横の席に通した。
「すごいね。こんな知らない人の中に、終電前に来てくれるなんて」
そう言ったのは、彼と会社を共同経営しているCEOだった。
アバクロの白ポロシャツに、ジーパン。
そのくせ、筋肉質で分厚い胸板。いかにもITスタートアップ
(途中)
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