女豹5515

大学時代のあだ名は女豹。街の数だけ恋がある。物語(ストーリー)がある。ただそこには男と女がいるだけだ。

女豹5515

大学時代のあだ名は女豹。街の数だけ恋がある。物語(ストーリー)がある。ただそこには男と女がいるだけだ。

最近の記事

涙の新開地

その日も雨だった。 新開地駅を出たところにあるスーパーの裏が私たちの待ち合わせ場所だった。 (途中) 「今、何してる?」 「仕事だよ」 メールフォームをそっと閉じた。

    • 高円寺の彼

      「いつもどうしてそんなに寝起きがいいの?」 開いていない目で私の胸に顔を埋め、眠そうにしている。 寝てない、なんて言えるわけがない。 ”隣にいる時間が愛おしくて、寝るのが勿体無かった"など言えるわけがなかった。 顔がとても好きだった。 背が高く、彼の選ぶもの(服や家具や植物、仕事)も好きだった。 そのくせ才能もあった。 絵を描くのが上手い彼は、大学時代、イギリスに絵の留学をしていたという。 すべてが私好みで、とても可愛かった。 二人で会うのはほとんど彼の高円

      • 雨の東品川

        ある秋の夜。 「俺、今からここ行くけど来る?」 TYハーバーのマップとともにLINEが入る。 「今、恵比寿にいるよ。充電なくなるかも。とりあえず行くね」 誰と一緒かも分からないまま、タクシーに乗って東品川に向かった。 「そこはね、有名だから。住所じゃなくてお店の名前言ってくれたらわかるのに」 白髪のドライバーは笑いながら私を送り出した。 雨をかぶった床がつるつる滑り、ピンヒールの脚は早く歩けなかった。 なんとなく胸騒ぎがする。 カウンタースペースの向こうに彼

        • 本庄の朝

          6月に入ったある日。 いつものようにバイトからあがって終電に乗ろうとしたが、どうしても帰りたくなかった。 今日帰ったらまた横浜の妻子持ちに連絡してしまう。 そして、何より寂しかった。 気付いたら彼に電話していた。 「あの…今日帰りたくなくて。まだ終電間に合うんですけど」 「どうしたん?俺は今日たまたま早く帰って来てるけど。話聴こうか?」 とにかく誰かに話さないと壊れそうだった。 「茶屋町のロフトまで行きます。着いたら連絡します」

          北浜の夜

          大学1年の秋。 オーストラリアから帰国する前、"日本に帰ったら会いたい人"をノートに書き出していた。 2番目に浮かんだのはバイト先の常連客だった。 彼が働くドコモ関西支社の地下にその店はあった。 昼間は蕎麦屋、夜は居酒屋で、 オフィス階から降りて来るサラリーマンで毎夜にぎわった。 店長が客に気に入られるようにと書いた名札のせいで、常連客は皆、私のことをあだ名で呼んだ。 彼だけはあだ名どころか私の名前を呼んだことがない。 常連客の中では目立って格好が良かったた