たとえ空箱だとしても
連休中は、うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー、グリーンブック、フォレスト・ガンプ/一期一会、ロシュフォールの恋人たちを見た。
名作を過剰摂取したおかげで情緒がしっちゃかめっちゃかになり、ハイなのかローなのかよく分からないテンションのまま平日を迎えた。
今、目の前に大きな壁がある。
苦労は買ってでもしろというが、私はあまりそうは思わない。痛い思いや苦しい思いをしたところで、心や体がもう二度と戻らないくらい壊れてしまうことが一番恐ろしい。人間は自分の意思で壁を避けてもいいし、そのことを誰かが責める権利もない。
けれど、今目の前にあるのは本能で、これは乗り越えないと駄目な壁だと感じている。これを逃してしまったら、もう二度と何かが手に入らないような、この壁を超えた先にある景色を見てみたいと思うような、そんな気がしている。
などと大真面目に話すとあなたは馬鹿馬鹿しいと笑うだろうか。
フォレスト・ガンプのガンプには愚か者という意味があるらしい。愚かの名を名乗るものとして勝手に親近感が沸くが、彼の人生はあまりに出来すぎている。彼の知能指数は人より劣っているかもしれないが、フィジカル面で才能が開花し、人との出会いに恵まれ、持ち前の運の良さで、苦難を乗り越えて行く。
どこまでも映画だ。私の知っている現実は、突然何かの才能に開花することもなく、やっと辛いことを乗り越えたぞ!と思ったら平気で更に辛いことが待っていたりする。そこに救いはない。それでも生きるしかないのだ。
ジェニーが嫌いだ。誰のせいでもなく自ら敷かれたレールを逸脱し、流されるままに人生を歩み、いつも寄り添ってくれていたフォレストの気持ちを蔑ろにし、最後にはいままでひどいことをしたなどと都合の良い事を言い、フォレストに父親の役割を求める。
けれどこの感情は同族嫌悪だと思った。フォレストのように実直に生きられたらどれほど良いことか。結局はジェニーのようにその場しのぎで流されて、困ったときは人に縋るようにしか生きることが出来ない。
過去に仲違いした、映画好きな古い知り合いがいつの間にか女優になっていて映画に出演したのを知った。
夢を叶えてしまう人というのは、本当に叶えてしまうんだな。
元々遠かった距離が更に遠くなったのを感じた。
私の持っているチョコレートの箱は多分空箱なのだろう。
分かっている。けれど最後の一粒が残ってやしないかと、その箱を開けずにはいられない。
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