4/28 日記というか雑感というか#7
ふと地元のことを思い出した日だった。私の家の近くには山があり、その山を登っていくと毘沙門堂があるのだが、そこへ行くまでの道に七つ石、とか言われるでっかい岩があるのだ。
御堂まではかなり登らなくてはいけないのであまり行った回数は多くないのだが、一度七つ石を探すために山を歩き回った覚えがある。なかなか最後の一つが見つからずクタクタになったものだ。
私は地元に関しては正直つまらない場所だと思っていたのだが、地元から離れて考えてみると、この山の中に御堂があり、その途中の道に神秘的な巨石があると考えると、まるで小説の舞台のような気がしてきて案外近すぎてわからなかっただけなのかもしれないと思える。
薄暗い山の中にヒグラシの声がカナカナカナ……と響いていた記憶があるので、きっと私がその山を登ったのは夏の終わり頃だったのだろう。小さい頃の思い出だからあやふやになっても、そのヒグラシの鳴き声だけは今も耳に残っている。
山に登っても蚊に刺されるし疲れるし、良いことなんて全くなかったのではないかと思うのだが、不思議と悪い記憶はない。地元とは、故郷とはそういうものなのだろう。だからこそ、帰りたいと思うのかもしれない。
今はCovid-19の影響もあり、帰ることはできないが、そういう時に限って帰りたくなるものだ。今更ながら、冬休みや春休みに帰省しなかったことを後悔している。こういう後悔はあまりしたくないものだ。帰りたいと思った時に必ず帰ることができるとは限らない。
地元にいる母は私のことを心配してくれているのはわかるのだが、なんとなく意地になってしまい、私は普段は地元に帰りたくなくなるのだ。私と同じような経験をしている人は多いのではないだろうか。特に男性に多いのではないかと偏見を持っているが、私の考えは案外的外れではないだろうと思っている。
夏休みには帰省できるだろうか。もう一度、あの薄暗い山の中に入って子供の時のように七つ石を探してみたい。記憶にうっすらと残っている風景を探してみたいと思うのだ。
そして、久しぶりに料理上手な母親の料理を食べてみたい。いい加減、私も意地になるのはやめなければならないのだろう。わかってはいるのだ。私が帰省すれば、母は昔のように、変わらずに「おかえり」と言ってくれるであろうことは。
だが私はなかなか素直にはなれない。これだからこの男は、と自虐して今日一日が終わってしまう。