アカネ号の思い出
昔々…
自分の店の中でボロボロになったCB125をレストアして点火式をやっていた、バイクの名はアカネ号。
あの頃は自分も癌と闘病が10年を越えた頃であった。
「人は死んだら終わり、だが、メカは生き返る」
それを自分の店の中で皆に伝えたかった。
皆が対等の一人間になるために、自衛隊員の防大出の幹部も日立やソニーのエリートもビニールシートを敷いた地べたで持ち込んだ酒やつまみをビールケースをテーブルにして飲む。
そして、組み上がったバイクのエンジンをキックでかける。ルールがあって、一発でエンジンが掛かったら会費は割り勘、かからなかったら私がオゴるってことだ、この時もアカネ号は一発で掛かって大笑い、引き取り手が早く見つかるようにワイルド7のヘルメットも自作してオークションに出して、若いカップルの子に引き取られたっけ…、「このバイクを彼女にプレゼントしたいんです」、嬉しかったなぁ。
自営業はどんな老舗だろうが、一頭地にあろうが、親が金持っていようが、流行の最先端だろうが、明日閉めれば終わり、どんな古兵の政治家も選挙に落ちればただのジジイなのと一緒。
人間は死んだらそれで終わり、決して生き返ることは無い、だが、メカは違う、再びこうして生き返ることが出来る、ただし、生き返ることが出来ない人の手によってだ。昔から私の店造りは、この縮図を客の皆で共感出来る店を目指した、この理を忘れずにいようと皆で杯を交わした。
自営業とは、この「理(ことわり)」が、本来は厳しく辛いのに、楽しくて離れられなくなったらこっちのもんだと思います。
あの頃も息をしていた、
今もこれからもね。