温故知新(詰パラ265号)
今日は詰パラ265号(昭和53年3月号)を読んでみよう。まず、表紙の裏にいきなり七条兼三氏の市松煙1号局と駒場和男氏の「三十六人斬り」が載っていて驚かされる。作者の言葉を読むと、主幹の回復を願って温存していた大作を放出したということらしい。確かにインパクトは強烈だが、4時台にもう白鵬や朝青龍が出てきたような違和感も覚えてしまうなあ(笑)。
合評室を読むと、吉田氏のこんな文章が目に留まる。
詰棋校そのほかの「担当者」として一番大切な心がけは、選題作品について愛情を持つことではないかと思います。批評精神は勿論必要ですが、かと云って自分の選んだ作品について何の主張もなく、 ただつまらん、気乗りしない、といった態度だけに終始するのでは、そんな作品を何故選んだのか、と訊きたくなります。「解説」もテレビ芸人まがいの感覚による「司会」であってはならないと思っております。文章を書く以上何かしら云いたいことがあって然るべきでしょう。――以上、私達の自戒とするところ。七年もやっていると、つい中年疲れが出そうです。
こういう文章を読むと、「果たして自分は本当に選題した作品に対して愛情を込めた解説をしてきただろうか」と自省せざるをえない。今やっている将棋パズルの解説でも、後から読むと「ここはこう書けばよかったなあ」という箇所がいつも目に付き、折角投稿してくれた作家の方に申し訳ない気持ちになることもしばしばだ。日暮れて道遠しとの思いを改めて強くする。
それから、フェアリーランドの結果稿で一寸いい感じの作品を見つけた。解は敢えて伏せておくが、5手のばか詰なので息抜きにどうぞ。
有吉弘敏
ばか詰 5手(詰パラ 昭和52年7月号)
ちなみに本作は、第4回前衛賞受賞作。まだ「すかし詰有効」だった頃の作品である。