『ジェニーの記憶』 THE TALE(2018)
『ジェニーの記憶』(2018)を観た。
未成年を性愛の対象にするのがどういうことか。40歳のコーチは13歳の主人公に愛おしそうに声をかける。「君のありのままが見たい」「(自分から)シャツを脱ぎたい?」これは恋愛?それとも虐待?48歳になった主人公が、本当のことを知りたいともがく。私は被害者じゃないと叫ぶ。ああどうか、ここでおわらないでくれ…と思った所で終わってしまったが、映画としてこれ以上誠実な幕引きはないだろう。
まともな大人は子どもをちゃんと「子ども扱い」する。子どもを搾取したい大人が、「君は大人だよ、もう自分で責任が取れるんだよ、自分で決めていいんだ。さあ。」と囁く。
例えば、「120cm未満はジェットコースターに乗ってはいけませんよ」と、ちゃんと子どもの安全を守るのか、「120cm未満でも、乗りたいんだよね?危険だけど大丈夫かな?君の意見を尊重するよ」と言うのか。という話とそう変わりないと私は思うのだが、性的同意となるとアヤフヤッとなってしまいがちではないだろうか。
アマプラのリンクが貼れない…
性的なシーンは大人の役者さんが代役したそうです。これ鑑賞前に知っとかないとヒヤッヒヤするから書いとく。
虐待も、DVも、時にはレイプですら、被害者が加害者のことを愛している中で、加害者も被害者のことを愛しているという中で、たくさん起こっている。逃げられないとわかっていて、巧妙に暴力が行使される。加害者が「これは愛だ」と信じ込み、支配欲と愛情をすり替えていることもざらにある。
ところがどっこい、現在、日本の「性的同意年齢」13歳。
この映画と同じこと(70年代アメリカ)が起こっても、2020年の日本では、罪を問われないということ。暴力や脅迫を受けていないから。激しく抵抗していないから。同意があったとみなされるから。自分から服を脱いだから。虐待とすら認められない可能性もある。
これ、どれだけ恐ろしいことか、この映画を観たらわかるから。
あまり書くとネタバラシになるので詳しくは書けないが、関係者が多くても、同性が周囲にいても、その場の力関係で目を瞑ったり、加担したりする。父親による子ども虐待を、母親が止められない事件があったように。その辺りも描き切っていることがこの作品の凄いところだ。