リア充という特権階級 第七話(ジャズの場合)

ヨースケはジャズピアニストだった。今も自分はジャズピアニストだと思っているが、人からはプログラマだといわれる。

ヨースケは、ジャズの自動演奏ソフトを作った。有名なジャズピアニストになりきって弾く自動演奏ソフトだ。ジャズピアニストのソロは、個々人っぽさがあるが、それはコードの中の特定のテンションと呼ばれる音の使い方によるものだ。

そこで、ヨースケはコード進行を読み込んで、チックコリア風に弾くとか、オスカーピーターソンっぽく弾くということが、できるミミックプレイヤーというソフトを開発した。だが、自分で弾くより、そのソフトの方がかっこいいフレーズを弾けるのに嫌気がさし、自分で弾かなくなったのであった。

ミミックプレイヤーのドラムバージョン、ベースバージョンも作り、ミミックプレイヤーだけで、ジャズセッションができるようにした。今では多くのレストランやバーに設置されている。

また、ミミックプレイヤーは、会場の盛り上がりをお客さんの心拍モニターや温度センサーで検知し、盛り上がるフレーズを自分で学習していく。盛り上がったときのフレーズや、ドラムとピアノの掛け合いを学んでいくことで、聞いたことのないぐらい興奮する演奏をするようになった。

もともと、芸術は人間が秀でているといわれていたが、ジャズについては、ミミックプレイヤーが人間のプレイヤーよりもいい演奏をできるようになってしまった。

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