大企業という仕組みが時代遅れになってきた
今まで日本の社会を支えてきた大企業。
大企業がイノベーションを起こし、イノベーションを起こした企業が大企業になり、大企業が社会を変え、日本をよい国にしてきた。
だが、それが変わってきていると思う。それは、大企業であるメリットがなくなったため。今までは、大企業であることで規模の経済が働き、小さな企業よりも効率よく製造・生産することができた。
どのように状況が変化しているのかについて、4つの視点から話をしたい。
1つめに、もともと企業の中でやっていた仕事を外注したほうが安くなるようになってしまった。
どんな会社でも実施しなくてはいけない仕事がある。それは、人事だったり法務だったり財務だったり。
その分の仕事量は、小さい会社であっても大きな会社であっても、一定量発生するため、大きな会社であることで、社員ひとりあたりの人事、法務、財務の費用を抑えることができた。
だが、今は、財務はソフトウェアがやってくれるし、人事も法務もアウトソーシングした方が安い。そのため、それらの業務のために人を抱えている方がコスト高になってしまう状況になった。
2つめに、年功序列というとてもよくできた仕組みが企業を大きくすることができなくなってきたため、崩壊してしまっていること。
ピラミッド型の組織を大企業は持っている。ピラミッド型の組織は、常に大きくなっていかなくてはいけないという宿命がある。なぜなら、ピラミッドの下の人たちが昇進する場所がなくなってしまうから。
昔の日本では、そうなっていた。だから、ピラミッドがなりたっていたし、それがモチベーションになっていた。うまくいっていた。
ところが今は、大企業はピラミッドの形を大きくすることができないばかりか、リストラでピラミッドを小さくすることを迫られている。
そんな状況で無理やり昇進をさせていくと、ピラミッドの下が小さくなり、上が大きくなる。長方形になってしまっているのではないだろうか。
しかも、ピラミッドの一番下の階層でしか、利益はうまない。現場は、一番下の階層にしかないのだから。
大企業では、今、崩れたピラミッドの上の方の利益を生まない人たちのコストが重くのしかかっている。
3つめに、ミスを防ぐためのコントロールにかかるコストが大きすぎる。
大企業への世間の風当たりが強い。インターネットができて、個人が調べることができる情報が増えたことも理由にあるのかもしれないが、今まで隠せていたことが隠せなくなっている。
また、大企業は、人が多い。そのため、どの人間も同じ確率で不正をすると仮定すると、大企業は不正をする確率が高い。
大企業は目立つ。しかも、多くの人が知っている。だから、何かが起こった時に、すぐに知れ渡るし、何かの不正があることが発見されやすい。
そのための制御用のコストが、大企業に大きくのしかかっている。社内ルールの整備と、それを維持するコストが大きく、そのルールにがんじがらめにされてしまい、自由に活動することを防いでいる。
4つめに、大量に売れるものが少なくなっている。
もの、物体を作る場合、安くたくさんの原料を仕入れて、たくさん物を売るというビジネスモデルは正しかった。でも、今、何かをたくさん製造して売るモデルは、ほとんどうまくいかない。
それは、技術からコンテンツの社会になっているから。コンテンツを作る場合、イノベーションを起こすための初期コストが、工場を作ることに比べれば、かなり安くすむことも、大企業であるメリットを小さくしている要因だと思う。
技術的にすごいもの、機能的にすごいものは、もうすでに必要なレベルに達している。
もっといい○○が欲しい。の、○○に当てはまるものが思いつかない。
それは、家電でも服でも、音楽も、そう。だから、ものはどんどん安くなる。
エアコンも5万円だし、テレビも5万円。だから、機能とか技術とかじゃなくて、いいコンテンツが求められている時代なのだと思う。
4つの理由を書いてきたが、大企業であることのメリットと、大企業が築き上げてきた素晴らしいモデルである、たくさんの人を雇って長く勤めてもらうというモデルが時代遅れになってきているのだと思う。