本格推理モノのその先とメタミステリ~『屍人荘の殺人』と『名探偵の掟』~

こんとん!
先日、とある映画を見に行った。タイトルにもあるが、『屍人荘の殺人』である。

地元のTSUTAYAで盛んに映画の番宣がされていて、尖った登場人物によるコメディ寄りのミステリーという風情で告知されていた。『TRICK』とか『33分探偵』といった小ネタの多い作品が好きなぼくにぶっ刺さりそうな雰囲気である。とりあえずその場では原作本を買うのみに至り、まあいずれ読もうくらいの気持ちで我が家の積ん読本の一冊になるはずだった。いろいろあって映画を見に行くまでは…

上映が始まり、期待していたコメディ要素、アクの強いキャラクター達がスクリーンからこちらに主張してくる。ところが、とある展開により、作品の雰囲気が一変する。
「えっ、そういう映画(作品)なの!?」
困惑するぼく(および視聴者)だったが、状況が進んでいくと本格的なミステリが展開され、さきほど述べた「ある事象」と見事に組み合わせてこちら側に畳み掛けてきたのである。正直、感心した。
無論、演者も良かった。メインキャストにしても、ヘタレなミステリオタクを演じる神木隆之介。あざとい(だがかわいい)名探偵役の浜辺美波。尊大だが抜けてるところがチャーミングなホームズポジションの中村倫也。なにも考えずこの人たちを眺めてるだけでも面白いのだが、一番ぼくの感心をつかんだのは話の筋、原作の強度、しっかりした本格ミステリだった。

映画を見終わったぼくは家に帰るや否や原作本を読むことにした。原作と映画版の違いが気になったからだ。実写化の際は散々な出来になる、と騒がれる昨今であるが、ここまで映画版でも面白いなら、原作も面白いはずだ。なぜなら、これまでに感心させられたのだから。「なぜなら~からだ。」の構文がめちゃくちゃであるが、そんなことはどうでもよい。

結論から言おう。原作も素晴らしい(当然である。原作が素晴らしいから映画化されたのだ)。
映画版から先に入ったからか、映画版の変更点はきにならなかった。むしろとても良い塩梅の脚色だったのではないだろうか。

さて、話の流れ的には『屍人荘の殺人』という作品の感想を映画版を中心に語っていくところだが、タイトルを見直して欲しい。…ややや、何やら論文めいたタイトルしてるぞ?そう、ここから述べるのは感想というより随筆である。自由律随筆である。なんだ自由律随筆って。頭痛が痛くなる。
『屍人荘の殺人』の作者は今村昌弘さんで、これがデビュー作だそうだ。しかし、副題にある『名探偵の掟』は『探偵ガリレオ』『新参者』でお馴染みの東野圭吾さんの作品である。一体それとこれとなんの関係が?と思うでしょうが、ちょっと待って、ぼくの中では関係あるんです。というわけで(どういうワケダ)今回はこの二作を比較しながら『屍人荘の殺人』について述べます。
  以下、両作品の核心をつくネタバレを含むので!注意!です!

2020/04/26追記:友人からこの記事を読んだ感想として、
「ふわっとしたネタバレかと思ったら核心を突くネタバレじゃねーか!」

と怒られました。
ネタバレあるよって書いたのに・・・
という訳で『死人荘の殺人』を視聴、もしくは読破済みであることをお勧めします(今更?)

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