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妻と縄 89.変態

「お早う」
夫の包むような笑顔が眩しい。
私は目を合わせずに挨拶を返した。
院長のことを考えるだけでドキドキしてしまう自分がいた。
熱い溜息がこぼれてしまう。

「今朝は機嫌がいいね。何かいいことあったの?」
朝食を食べながら夫の言葉に、一瞬ドキッとした。
「別に何もないわよ」
「そう?! 凄く楽しそうだけど」
「いつもと同じよ」
「まあ、カズミが幸せだったらそれでいいけどね。俺も嬉しい」
そう言って微笑む夫の笑顔が眩しい。
朝から院長のことを考えていた自分が恥ずかしい・・・・。

夫を送り出した私は、掃除をし洗濯をして忙しい振りをした。
そうしないと院長のことを考えてしまうからだ。

これからクリニックに出勤するたび、院長に犯されるのだ。
そう思うと、胸が熱くなる。

今日はショッピングに出かけよう。
私は気を紛らわせるように独り呟いた。


済んだ空気と昼前の明るい日差しが眩しい。
家を出てすぐコミセンの前を通る。
胸がドキドキする。

チラリと玄関のガラス戸を通して中を覗き見る。
今日はコミセンの定休日だ。
館長を兼任している会長も副館長の永田もいない。
少しがっかりしている自分に気付かない振りをして通り過ぎる。

駅前に差し掛かると、踏切がカンカンと鳴った。
その手前が酒屋だ。
また胸がざわめく。
暗い店の中を覗き込む。
大将の姿はない。
客の少ないこの時間は、奥に引っ込んでいるのだろう。
私は唇を噛みしめた。

ああ、何を期待しているの?!
私は自身を責めるようにつぶやいた。

駅前の商店街を自転車を降りてぶらぶら歩く。
ここは私にとって危険な場所だ。
私を抱いた男と出会う確率が高い場所なのだ。
中華飯店の田中社長に奥さん、その店員の間山英二、縄師の新井先生、そのスタッフの水野、会長の花田に副館長の永田・・・名前を知っているだけでそれだけいるのだ。
名も知らない顔さえも知らないまま私を犯した男は数知れず・・・。
我ながら最低だと思う。
ヤリマン、ビッチ・・・そう呼ばれても仕方のない話だ。

ふと気付けば、私の足はクリニックに向いていた。
商店街を通り抜け、クリニックに向かおうとしている自分に驚いた。
昨日、抱かれたばかりなのに、もうそんなことを思っているのか・・・
無意識とはいえ、我ながら呆れてしまう。

帰りも酒屋の大将はいなかった。
もう何日も会っていない。
どうしているんだろう?

・・・何を期待しているんだろう?!
私は一体何を求めているんだろう?!
自分が分からない。
私は独り熱い溜息をついた。
思えばこの時、私は硬い殻を脱ぎ去り、変態しようとしていたのかも知れない。

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