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ベンガル湾を越えて西へ飛ぶ

蒼い海の上にぼんやりと姿を映して無数の白い雲がぽっかりと気ままに誰に見られるためでもなく気持ちよさそうに浮かんでいるのを機上で見たいつかの昼下り。どこまでもいつまでも雲は続きゆっくりと視界は移動してゆく。機内の人々は自分が空の上に浮かんでいるのも忘れてそれぞれの内的世界で戯れることで時を過ごす。空調が雑音となって聴覚を刺激し続けるその合間に時折り異国の言葉が聴き取れぬままに遠くから響いてくる。天帝の園の明るさが透明な窓越しに目をくらまして一人ぼっちでもないのにどうにも寂しさが湧き上がってきた。束の間のことだと分かっているのに永遠に止むことのない悪魔と天使の静かな誘惑に意識が打ち震えて脳脊髄液の音もない循環が体中の細胞徒交信を繰り返して、ああ、白い雲の綿菓子が薄緑の海に藍の影を落とす! そこはもうコルカタに近いベンガル湾の浅瀬だったのだ。
#自由落下の言葉ども

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