[全文無料: 小さなお話 005] 幸せの秘密
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[約2,000文字、3 - 4分で読めます]
あなたはどんなときに「幸せだな」って感じますか?
幸せの形は人それぞれだけど、おいしいものを食べたとき、好きな人と一緒のとき、街でほほえましい光景を見かけたとき、人生のそんな、ちょっとした瞬間に幸せってやってくるもんですよね。
そういう小さな幸せをつかまえるのが上手い人は、「人生の達人」だと思いませんか。
ぼくという人間は、どちらかというと不幸せな人生を送ってきたほうだと思っています。
悲惨な人生だったってわけじゃないし、何がそんなに不幸なのって言われるかもしれない。
はたから見たら「勝手気ままに生きていて、いい人生じゃないか」って思われるようなところも大いにある。
だけど、誰かの人生の質って、周りから見てるだけじゃ案外分からないもんです。
なんだか自信がない、いつも失敗を恐れてる、人からどう思われてるか気になって仕方がない。
あなたはそんなタイプじゃありませんか?
ぼくはほんとに自分勝手に生きてるし、自分でも「人からどう思われたってかまやしない」とか思ってるんだけど、ほんとはそういうのがいつも気になってる。
だからこうやって文章を書いて、少しでもまともな人間のふりをして、みんなからの肯定的な反応を求めています。反応が得られると嬉しいけど、それも束の間で、たくさんの肯定的な反応をもらってるのに、あっという間にもらえてるものだけでは足りない気分になってしまいます。もっと反応がほしい、隣に見えるあの人のような反応がほしい、でもぼくはあの人じゃないから、あの人のようには振る舞えない。真似してみても所詮真似事でしかないから、あの人のようにうまくはできません。それでやっぱり自分はダメだなって気分になって、続けていくことができなくなって、あっちに手をつけ、こっちに手をつけ、しばらくは楽しめてもやっぱり長続きはしない。そうしていつもの「こんなことしてて何になるんだ」、「こんな世界ほんとにまったくばかばかしい」、「おれってほんとに生きてるのに向いてないな」と悪循環のど壺が、いつも右肩の後ろに待っているような人間なもんで、これってやっぱりちょっと不幸せなんじゃないかなって。
そんな亡霊に取り憑かれちゃってるから、身の回りにいくらでも転がっているせっかくの「幸せの種」を、なかなかつかまえられないし、たまにつかまえてもすぐ落としちゃう。今までの半世紀を越える人生で、せっかくの「幸せの種」をずっと大切にすることができないままだったってことなんです。
でも、このザルで水をすくうような不幸せ人生とも、どうやらそろそろ縁を切ることができるかもしれないなって、ようやくそんな気がしてきたところでして。
というのも、幸せの秘訣は自分の心の満足にあるんだって、ようやく体感として納得し始めたんです。
そしたらついに腰の緊張が溶け始めたんです。
ただ生きてるだけで自分には価値があるんだって、ほんとにそう思えるようになってきたんです。
今まではいくら言葉でそう言っても、結局はそれを信じることができなくって。自分なんて生きててなんになるんだろう、なんにもなるはずがない、生きてるだけ無駄だって、心のどこかで思ってた。
でも今はもう大丈夫。自信を持って言い切れます。
「人間、生きてるだけで十分価値がある」って。
このことが分かっていれば、おいしいもの、好きな人、ほほえましい光景だけで、最高の幸せを全身で味わうことができます。
素敵なことをなんでも、体中に満足が広がるまで経験することができれば、幸せと友だちになることだって、簡単な話ですもんね。
もちろん、人間としてこの世界で生きている以上、楽しいことばかりではありません。どうしても避けられない嫌なことだってあります。
でもどこにでも転がっている「幸せの種」をぱっとつかまえるコツさえ身につけてしまえば、わざわざ嫌なことにつかまえられることなんかなくなっていきいます。
月が満ち欠けを繰り返し、波がやってきては返っていくように、いいことも悪いことも、やってきては去っていく。ただそれだけのことです。
いいことがやってきたときにしっかりそれを味わい、悪いことがやってきたときには、落ち着いてそれに対処する。
そうするだけの心の平穏があれば、いつでも神さまはあなたの味方をしてくれます。
絶対ゆるがない「心の平穏」なんて、そんなものは宗教の教典の中にしかないような気がしますが、自分の中の「心の平穏」を大切にするかどうかは、ぼくたち一人ひとりの心がけ次第ですよね。
心の平穏があれば、小さな幸せで体は満足します。体がしっかり満足すれば、心だって大満足です。難しく考えないで、生きる実感を大切にすれば、幸せはいつもあなたの友だちでいてくれます。
「生きてるだけでもうけもの」みたいな言葉もあるけれど、せっかくこの世に生まれてきたんだから、毎日を幸せに生きたいじゃないですか。
あなたは今幸せですか?
そう聞かれたときに、元気よく「ええ、もちろん!」と答えられるようになりたい。
そんなふうに思って、今日もこうして文章をつづってみたんです。
[2018.12.1 西インド、プシュカルにて]
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