#79 三好(2020)の「1.はじめに」を紐解く
独自に産業連関表を作成する
本マガジンでは、都道府県の産業連関表を元に、マテリアルフロー分析を実施しています。各都道府県は概ね5年毎に産業連関表を作成・公表しているいるため、マテリアルフロー分析を各年で行うには、作成対象年以外の年の産業連関表を、独自に作成する必要があります。
コントロール・トータルズとして重要な県内生産額
産業連関表において、県内生産額は、「コントロール・トータルズ(略して、CT)」と呼ばれます。県内生産額は投入と産出が整合するように調整され、いわば「制御値」として極めて重要な位置付けにあることからこのように呼ばれます(総務省「平成23年(2011年)産業連関表(ー総合解説編ー)」、p.61を参考)。
したがって、産業連関表の作成において、県内生産額の推計の精度を上げることが重要となります。
Tachibana et al. 2008における産業連関表の作成方法
#72では 、先行研究(Tachibana et al. 2008)における、作成対象年以外の年での産業連関表の作成方法について紐解いてみました。
Tachibana et al. 2008では、
紙面の都合により、全ての産業における県内生産額の推計に使用した統計のうち、主な統計資料しか掲載できていない
精度を評価するために、1995年の公式の産業連関表を元に作成した産業連関表の県内生産額と、2000年の公式の産業連関表の県内生産額とを比較し、推計値と統計値の相関係数は0.9より大きい結果を得た
ということが言及されていました。
本マガジンでの、産業連関表作成における目標
そのため、本マガジンでは、
県内生産額の推計に使用した統計資料名について、できるだけ公表する
精度を評価するために、2005年の産業連関表を元に作成した2011年産業連関表における県内生産額と、2011年公式の産業連関表の県内生産額を比較する
を目標に掲げ、#73以降、各種統計資料を元に、2011年の岩手県における県内生産額を推計してきました。
県内生産額の推計方法に対する自信喪失
ところが、ここ最近、県内生産額の推計に自信がなくなってきました。
自分が採用している推計方法は精度的にはどうなのだろうか?
もっと精度が高い方法があるのではないだろうか?
と感じることが多くなってきたのです。
膨大な推計作業量に対する先行き不安
また、産業連関表をマテリアルフロー分析に援用するためには、産業連関表の産業分類が結合小分類である必要があります。
結合小分類だと、部門数が約190にも及びます。単純に約190の産業の県内生産額を推計することになります。
さらに、結合小分類の1つの産業の県内生産額を推計する際には、結合小分類よりも一段細かい分類である「細分類」を一つ一つ積み上げていく作業がすることも増えました。
そうなってくると、「いつになったら県内生産額の推計が完了するのだろうか?」という先行き不安にかられることも増えてきました。
「ここは一旦、推計作業を止めよう。そして、地域産業連関表の作成について、先行研究を調べて、推計方法の整理と作業量の見積もりをしてみよう」
そう思いたちました。
三好(2020)の「1.はじめに」を紐解く
前置きが長くなりました。
というわけで、今回は、以下の先行研究の「1.はじめに」の箇所を紐解いていくことにします。
三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』福知山公立大学研究紀要2020,4巻 1号 ,pp.185 - 208
ノン・サーベイ法とは
まず、タイトルにある「ノン・サーベイ法」とは何か?三好(2020)によると、
本研究に置き換えると、#73において、生産農業所得統計(農林水産省)から農業の生産額を推計しましたが、これがサーベイ方法にあたると考えられます。
ノン・サーベイ法での具体的な作成方法
本研究では、#74以降で、経済センサスを用いて、日本全国の値を按分する方法を多用しています。
サーベイ法?ノン・サーベイ法?
本研究は「個人研究」を謳っているので、当然のことながら私一人という限られた人数なので、小規模自治体と同様、一部とはいえサーベイ法の利用は非現実的な方法論となるのでしょう。
非公務員かつノン・アカデミックであるがゆえに
加えて、私自身が非公務員かつノン・アカデミックであるため、サーベイ法として利用する統計資料へのアクセスに制限があることも、非現実的な理由の一つとして挙げられます。
例えば、国や都道府県の産業連関表の作成で使用することが多い、経済センサス―活動調査組替集計へのアクセスができません。
上記の資料は、インターネットで公表されておらず、利用には申請が必要のようですが、非公務員かつノン・アカデミックな私に利用許可が出るとも思えませんし…
なので、本研究でも、出来るかぎりノン・サーベイ法で作成を行い、ノン・サーベイ法自体の精度を上げていくほかないようです。
推計方法の参考となりうる書籍を購入
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サポート、本当にありがとうございます。サポートしていただいた金額は、知的サイドハッスルとして取り組んでいる、個人研究の費用に充てさせていただきますね♪